スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シャーロック・ホームズ

http://wwws.warnerbros.co.jp/sherlock/

『アバター』を観に行ったときのこと。
何やら気になるポップ広告がありました。
ガラの悪そうな中年男二人が、ヴィクトリアン臭を仄かに漂わせつつ、不敵なまなざしでこっちを見ている…という。

タイトルは、『シャーロック・ホームズ』(※1)。
チョイ悪な駄目中年にしか見えない探偵ホームズと、裏で臓器密売買でもやってそうなツラのワトソン君。

sherlock.jpg



「・・!!」
 ・・・チガウ・・・今までの映画とはなにかが決定的に違う。スピリチュアルな感覚がアタシのカラダを
駆け巡った・・。「・・(面白そう・・!!・・これって運命・・?)」


そんなわけで、念願の『シャーロック・ホームズ』を観て参りました。

予告編やチラシでは黒魔術だの格闘術だのを強調していたため、「推理なんざどうでもいいぜ!アクションに徹底するぜ!」的なノリを予測しておりました。
いざ映画を視始めても、クロスカッティングで「まずは耳…次に肝臓…仕上げは腹…奴は15分は動けない」などと解説する、妙にロジカルな格闘シーンが印象強かったため、「論理的なのは格闘場面だけに絞るんですね、わかります」とナメていました。
でも、実は結構推理要素があったりします。ホームズおなじみ(※2)、相手の外見のみでその来歴を推理する程の観察眼を決めてくれます。ばら撒いた謎や伏線はちゃんと回収します。「こういう映画だから細かいこたぁいいんだよ!」ってな最終兵器的理屈に逃げたりはしません。前述のクロスカッティングの巧みさは、格闘シーンのみならず推理シーンでもしっかり活かされています。

バカなノリは強いけど、全部バカで突っ切るほど造りが粗いわけではない。それどころか、丁寧なくらい。
いい意味で騙されました。
この丁寧さ、実にウザい(ほめ言葉)!

そう、妙に丁寧な映画なのです、これ。

ロンドンの風景も良い感じであります。「霧の都」との形容が相応しい昔ながらの建物や雑踏や河に、産業革命の息吹を与える歯車と蒸気。テムズの河に雑然と浮かぶ鋼鉄船、そしてタワーブリッジの様子には「あぁ…ヴィクトリア朝のロンドンだなぁ…」と、妙に心地よくなりました。
スチームパンク好きの人にもたまらないのかもしれません。

まぁそんなこんなで、「意外と推理要素もある」「ヴィクトリア朝ハァハァ」ってところも良いところなんだけど、それより何より、キャラが素晴らしい。
乱暴に言うと、探偵・助手コンビのどちらもツンデレ。論理武装して強がるホームズ、ぼやきながらも世話を焼くワトソンと、それぞれタイプは違うけど、こいつらはまごうこと無きツンデレオヤジであります。

敵方をあえてわかりやすい悪人(でも誇大妄想的陰謀って…嫌いじゃないわよ…)に設定して、主役であるツンデレオヤジコンビのいちゃつきを濃厚に描き出しております。
一応、ホームズにもワトソンにもそれぞれアドラーとメアリーという女性があてがわれており、この二人も決して影が薄いわけではないんだけど、それでもホームズ×ワトソン(アッー!)の絆の濃さには敵いません。ゲイ疑惑をカモフラするために女を作ってる、と揶揄されても文句は言えないでしょう(笑)。

他人やクスリに依存気味な天才ホームズと、苦労性な世話焼き女房のワトソンが、男の絆で事件解決。
こう書くと非常に暑苦しい。
けれど、「俺一人ではダメだけど…仲間がいれば…奴にも勝てる!」的なクドい台詞があるわけではなく、かと言って、信頼と情愛に満ちた視線で見つめ合いまくるというわけでもありません。

ホームズは我儘で、それでもワトソンが居ないとすっごい寂しそう。
ワトソンは迷惑そうで、それでもホームズが居ないとどこか物足りなそう。
そんな演技を一貫することで、切っても切れない腐れ縁的な絆が描かれています。燃えますし、笑えます。人によっては、萌えもするでしょう(かくいう私もその一人でね…)。

洗練された暑苦しさ、とでも言いましょうか。いや、変な方向に尖った暑苦しさ、と言った方が正しいか(笑)。
わたくしのような、多少頭の腐った人間にはたまりません。そういう方でなくとも、嫌悪感なく楽しめるとは思いますがw

しかし、主演のロバート・ダウニーJr、いいですね。『アイアンマン』の社長の天才っぷりや『ゾディアック』の記者の落ちぶれっぷりも良かったけど、それらを併せ持った性質のキャラであるホームズをも好演してます。ちっとも英国紳士には見えない風貌と衣装と仕草で、まわりから完全に浮いている変人・ホームズ(やるときはやれる駄目人間ってのはとっても掘れます。あ、惚れます)。『アイアンマン2』にも期待したいところです。

モヤモヤするものも残らず、純粋に「楽しかったー!」と言える映画でありました。
あ、いや、続編が気になってモヤモヤしちゃうけどね。モリアーティがプロフェッサー・ガン(装飾デリンジャー)でガン=カタすると思います、多分。

続きを読む

スポンサーサイト

一周忌

3月20日。
SF作家の伊藤計劃氏が亡くなられて、今日でちょうど一年となります。
昨日19日には、氏の映画評などを集めた『伊藤計劃記録』が発売されました。
『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』文庫版も25日に出ます。

この一年で、氏の作品を巡って様々なことが起こりました。なかでも『ハーモニー』の星雲賞・SF大賞を受賞したことや『虐殺器官』の文庫化は、新たに多くの読者を獲得することになりました(どこでも平積み。もう6刷だとか。すげーな)。
twitterや2chなどで交わされているファンの交流には、自分も参加しております。
「project goes on」。この流れの中に、身を置く小さな一人として自分は在ります。

多くの人から、氏の夭折を悼む言葉が捧げられました。
氏は「御冥福を祈ります」という文句に対しては懐疑的でありました。「冥府での幸福を祈る」。氏は死後の世界を信じず、冷厳として現実世界を見据える人でありましたから、この文言に納得したくなかったし、納得できなかったのでしょう。
もっとも、それはあくまで氏個人の信条であるので、氏に「御冥福を」との言葉を送った人の心情が否定されるわけではありません。
でも、やはり、自分としては、氏の考え方に従い、こう言いたいのです。
「ありがとう」と。

だが、果たして自分に「ありがとう」と言える資格があるのか?
感謝の言葉は、誠実であらねばなりません。
今の自分は誠実であるとはとても思えません。

『伊藤計劃記録』に収録された映画評は、個人サイト「spooktale」から抜粋されたものです。
ブログ「第弐位相」のときのものと比べると、「これから観る人への紹介」という要素が強いため、ぼかしている部分も多くはあります。
しかし、やはり、鋭い。「これからも自分は、映画を観るたび、あの人ならどう見たのかを考えるのだろうな」との思いを新たにさせられました。

氏の歩んだ道は、小説家としては(小説家は大概変わった人生歩んでるけど)珍しいものでした。美術大学を出て、漫画家アシスタントやwebディレクターで身を立て、同時にwebや同人誌での創作活動を並行し、SF小説でデビュー。
『虐殺器官』でのデビューについても、小松左京賞の落選から円城塔・大森望の両氏によるピックアップという過程を取りました。少し道が違えばそのまま埋もれていたかもしれません。

また、幼少期からの喘息や、若くして罹った死病。
「医療技術と制度に繋がれていなければ、自分は死ぬ」という状態は、テクノロジーと社会と身体との関係性への考察を涵養することにはなったのでしょうが、代償はあまりに大きいものでした。

氏をフォローするといっても、氏の道をそのまま歩もうとすることは不可能であり、無意味であり、不誠実であります。
氏が生んだものは、氏がその道から得たものをなぞっただけで生まれたものはありません。氏がその全身全霊を以て吸収して栄養とし、氏だけしか持ちえない形を取った力で生みだしたものです。
円城塔氏が「伊藤計劃亜種なんてものに出会ったら、間違いなく潰す」と厳しく書いたのは、そういうことでしょう。

娯楽作品が「泣き」を押しだす世にあって、氏は「泣きたがりさん」への警告は常々されておりました。
それだけで作品を捉えるのは、あまりに鈍感であり面白みが無い、と。自分も同意します。
しかし、この一年の自分を思い返すと、次の様なおぞましい考えに襲われます。

自分は、氏の夭折をネタに泣きたかっただけなのではないか。

違うと言いたいけれど、違うと示すに足るだけのものはまだ見せられません。誠実さが足らないのです。
読書量や審美眼が至らないというだけのことではなく、社会に自分を投げ込むための針路もまともに定まっておりません。

氏もその道の途において逡巡することは多々あったでしょうが、自らと世界との関わりを真摯に考えていたことは間違いないはずです。
そうでないと、あれだけ鋭敏な目を得ること、そしてそれを御すことはかなわなかったでしょう。

誠実な自分で、氏に「ありがとう」と言えるよう、自らの道を見つめ直すこと。自分はこの誓いを、一周忌に寄せることとします。
アクセスカウンター
twitter
プロフィール

Solidrb

Author:Solidrb
自他ともに認めるMGS(メタルギアソリッド)フリークス。
その証拠に、当初はもっと幅広く話題を扱おうかと考えていた(←大嘘)このサイトも、ずるずるとMGSネタオンリーブログになりかけてきている。

SFを中心に、様々な作品に触れようと目論んでいる。
が、生来のヘタレゆえ、なかなか数がこなせない。

twitterや読書メーターもやっているので、そちらにも是非いらしてください。

○注意書き
・コメント、拍手
常に餓えておりますので、古い記事にもぜひ気軽にどうぞ。名前欄はテキトーでもおkです。
(今後どうなるかはわかりませんが)全レス主義で臨みます。
コメントは承認制を採っていますが、スパム以外は基本的に消さない方針です。

・トラックバック
コメント同様、承認制ではありますがお気軽にどうぞ。
ただし、記事内容と関連性の無い宣伝トラックバック(※どう見てもツールでキーワード検索かけて貼っただけの、商業的性格が強いものなど)については削除することにしました。

・リンク
ご自由にどうぞ。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
読書メーター
TCrbの最近読んだ本
応援中
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。