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一周忌

3月20日。
SF作家の伊藤計劃氏が亡くなられて、今日でちょうど一年となります。
昨日19日には、氏の映画評などを集めた『伊藤計劃記録』が発売されました。
『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』文庫版も25日に出ます。

この一年で、氏の作品を巡って様々なことが起こりました。なかでも『ハーモニー』の星雲賞・SF大賞を受賞したことや『虐殺器官』の文庫化は、新たに多くの読者を獲得することになりました(どこでも平積み。もう6刷だとか。すげーな)。
twitterや2chなどで交わされているファンの交流には、自分も参加しております。
「project goes on」。この流れの中に、身を置く小さな一人として自分は在ります。

多くの人から、氏の夭折を悼む言葉が捧げられました。
氏は「御冥福を祈ります」という文句に対しては懐疑的でありました。「冥府での幸福を祈る」。氏は死後の世界を信じず、冷厳として現実世界を見据える人でありましたから、この文言に納得したくなかったし、納得できなかったのでしょう。
もっとも、それはあくまで氏個人の信条であるので、氏に「御冥福を」との言葉を送った人の心情が否定されるわけではありません。
でも、やはり、自分としては、氏の考え方に従い、こう言いたいのです。
「ありがとう」と。

だが、果たして自分に「ありがとう」と言える資格があるのか?
感謝の言葉は、誠実であらねばなりません。
今の自分は誠実であるとはとても思えません。

『伊藤計劃記録』に収録された映画評は、個人サイト「spooktale」から抜粋されたものです。
ブログ「第弐位相」のときのものと比べると、「これから観る人への紹介」という要素が強いため、ぼかしている部分も多くはあります。
しかし、やはり、鋭い。「これからも自分は、映画を観るたび、あの人ならどう見たのかを考えるのだろうな」との思いを新たにさせられました。

氏の歩んだ道は、小説家としては(小説家は大概変わった人生歩んでるけど)珍しいものでした。美術大学を出て、漫画家アシスタントやwebディレクターで身を立て、同時にwebや同人誌での創作活動を並行し、SF小説でデビュー。
『虐殺器官』でのデビューについても、小松左京賞の落選から円城塔・大森望の両氏によるピックアップという過程を取りました。少し道が違えばそのまま埋もれていたかもしれません。

また、幼少期からの喘息や、若くして罹った死病。
「医療技術と制度に繋がれていなければ、自分は死ぬ」という状態は、テクノロジーと社会と身体との関係性への考察を涵養することにはなったのでしょうが、代償はあまりに大きいものでした。

氏をフォローするといっても、氏の道をそのまま歩もうとすることは不可能であり、無意味であり、不誠実であります。
氏が生んだものは、氏がその道から得たものをなぞっただけで生まれたものはありません。氏がその全身全霊を以て吸収して栄養とし、氏だけしか持ちえない形を取った力で生みだしたものです。
円城塔氏が「伊藤計劃亜種なんてものに出会ったら、間違いなく潰す」と厳しく書いたのは、そういうことでしょう。

娯楽作品が「泣き」を押しだす世にあって、氏は「泣きたがりさん」への警告は常々されておりました。
それだけで作品を捉えるのは、あまりに鈍感であり面白みが無い、と。自分も同意します。
しかし、この一年の自分を思い返すと、次の様なおぞましい考えに襲われます。

自分は、氏の夭折をネタに泣きたかっただけなのではないか。

違うと言いたいけれど、違うと示すに足るだけのものはまだ見せられません。誠実さが足らないのです。
読書量や審美眼が至らないというだけのことではなく、社会に自分を投げ込むための針路もまともに定まっておりません。

氏もその道の途において逡巡することは多々あったでしょうが、自らと世界との関わりを真摯に考えていたことは間違いないはずです。
そうでないと、あれだけ鋭敏な目を得ること、そしてそれを御すことはかなわなかったでしょう。

誠実な自分で、氏に「ありがとう」と言えるよう、自らの道を見つめ直すこと。自分はこの誓いを、一周忌に寄せることとします。

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