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神の拳

神の拳〈上〉 (角川文庫)神の拳〈上〉 (角川文庫)
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フレデリック フォーサイス

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○前置きの前置き
お久しぶりです。

…と毎回言ってるけど、今回は特に御無沙汰でありました。なんせ、前の記事から一か月半も経ってるし。その間、随分前にやった怪しげな歌詞翻訳でアクセス数を稼いでしまいましたが、なんかそれはそれで寂しいってこって、久しぶりに書いてみようかという運びに相成りました次第で御座候。

さて、今回は、読書感想です。素材はフレデリック・フォーサイスの『神の拳』。


○前置き
94年出版ということで、わりと古い本です。作者の他の作品(『ジャッカルの日』など)に比べると書店でもあまり見かけません。というか、絶版しているらしく、新品ではまず見つかりません。やっと見つかったと思ったら、置いてあるのは下巻だけ…ってことも二度もありました。上巻をかっさらっていったどこかの誰かに殺意を覚えました(笑)。
そんなわけで、中古で見つけて確保しました。まぁ、そっちもそっちでなかなか見つかりませんでしたが。

読もうと思った切っ掛けは、ニコニコ動画のとあるMGS実況動画です。
twitterで知り合ったAzrailさんが配信しているシリーズで、ゲームプレイそのものよりも、ストーリー中にちりばめられた様々な蘊蓄を解説することに力を入れているという、マニアな人にはたまらないオススメ動画です。

そのシリーズのある回で、MGS1に多大な影響を与えたと考えられる冒険小説として、『神の拳』が紹介されていました。大ネタである核砲弾高速発射用の巨大砲のアイディアや、ソリッド&リキッド(特にリキッドの経歴)に受け継がれたであろう主人公像だけでなく、マスター・ミラーが話してくれるような戦場訓や、「ロイヤル・ハリヒア」などのニヤリとする単語、MGS1との類似点が確かにちらちらと見えます。


○概容
湾岸戦争前夜、火砲設計の天才ジェラルド・ブル博士が暗殺される。彼は生前、イラクのために超長距離砲「スーパーガン」を制作していた。スーパーガンによりイラクが核砲弾発射技術を持つことを西側諸国は恐れ、部品を水際で摘発する。しかし、その捜査の手は、実は十分ではなかった。
イラクがクウェートに侵攻し、米英を中心とする多国籍軍はクウェート解放のためサウジアラビアに集結しつつあった。多国籍軍の誇る圧倒的な物量を前にしても、なぜか膝を曲げないサダム。その自信の裏には、クブトゥタッラー…“神の拳”と呼ばれる核兵器があった。
英米両国は、イスラエルが接触を重ねてきたイラク政府中枢内のスパイ“ジェリコ”を利用して、戦時下のイラク国内の内情を探ることを決定する。仲介役としてバグダッドに潜入するのは、英国SAS少佐のマイク・マーチンであった。


○感想
凄い情報量。
湾岸戦争前後のイラク、イギリス&アメリカ、イスラエルの軍部や情報機関の密かな動きを“虚実交えて”描いた話…なのですが、虚と実の境界線がなかなか見えないほど、詳細な描写がなされています。もっとも、イラク戦争を経た現在になっては、旧イラクの軍事事情や未来予想に関して「間違っていた」と言いきれる部分もありますが、戦争の表裏を網羅した筆力には打ちのめされました。
これでも自分は小学生の頃から007などに親しみ、親兄弟や友人に疎まれながらも(泣笑)軍事・諜報関係のフィクションや資料にはそれなりに触れてきたつもりですが、やっぱり徹底的に取材して書かれた本格物からは、新しく得られる知識がたくさんあるものですね。作戦の内容、施設の様相、兵站の整備、…etc、いちいち詳しく描いてくれているので、好奇心を満たしてくれます(逆に、「そんな知識いらねー」って人は読み飛ばすべきかも)。

分類としては冒険小説で、主人公も最強の特殊部隊SASの隊員ですが、あまり銃撃戦などのアクションシーンはありません。クウェート市内のゲリラの教導や、スカッドミサイル破壊に類似した偵察活動など、体よりも頭を使っての工作活動が多く描かれています。まぁ、SASのオッサンって言っても、プライス大尉からキートン先生まで色々いますからね。

ヒュミント(電子通信技術よりもまず人間を中心とした諜報)の重要性を示唆したこの作品にあって、もっともその威力を見せつけているのは、アメリカのCIAやイギリスのSIS(MI6)ではなく、イスラエルの情報機関であるモサドです。
ていうかこの小説のモサドすげぇ怖いよ。いや、実際も怖いんだろうけど。CIAの管理官の暗躍を丁寧に描いた映画である『グッド・シェパード』を視たときもかなりイヤな気分に襲われたものだけど、この小説のモサドのやってることは本当に背筋が凍る。でもこれが諜報の世界なんだろうなぁ…と納得させられてしまうのは、工作活動に力を入れねばならない各国の勢力図と思惑が、詳細に描かれてるからでしょう。

作中でも「成功したスパイの例」として上がっているモサドの工作員、ヴォルフガング・ルッツの書いた『スパイのためのハンドブック』を少し前に読んで、情報伝達や偽装工作の際に必要な技術や手間の数々に「ここまでするのか!」と感心させられたものですが、そういったノンフィクションに決してひけをとらない知的興奮を齎してくれます。

蘊蓄冒険軍事小説ってだけではなく、ちょっとした推理小説要素もあります。ちなみに、ミステリー慣れしていない自分はまんまと騙されました(笑)。

膨大な情報を小説の形で載せるにあたっての工夫でしょうが、架空の重要人物の一部には、比較的“閉じた”人間関係が設定されています。例えば、作中で大きな役割を負うイラク軍士官の数人は、マイクと子供時代にプレっぷスクールにて学友であったなど。現実感を損なうこともさほど無く、むしろ西洋式の教育を受けたために一方では重宝され一方では疎んじられるイラク人達の複雑な事情を、マイクとの対比からわかりやすく伝えてくれるので、こういう工夫は好きです。まぁ、もともと自分は、「一見関係なさそうなこの人とあの人は実は!」みたいなのをすごく喜ぶタチなんですけどね(フィクション・ノンフィクション問わず)。

ただ、不満点もいくつか。
まず、サダムを完全な狂人として描き、イスラエルやクウェートの成立事情にはイギリスの不誠実な外交が絡んでいることなど、英米側の汚点にはあまり触れていないこと。良くも悪くも、アングロサクソン中心の描き方がなされた作品と言えます。別に陰謀だの差別だのと騒ぐつもりはありませんが、中立性はありません。まっとうな人格をもったイラク人も描かれていますが、そういった人物は西洋型高等教育を受けた人間ばかりですし。
それと、湾岸戦争全体を詳細に描き出すために必要な措置なのだろうけども、上巻と下巻、そして終盤における主人公マイクのそれぞれの任務にはあまり関連性がありません。言うまでもないことではあるんですが、主役に注目すると言うよりは諜報機関の動きを見る小説でしょう。

ともあれ、蘊蓄たっぷり、それでいて読みを停滞させられることの無い、読みごたえのある小説でした。


○次は
とりあえずマスター、フォーサイスおかわりだ。まずは『ジャッカルの日』から。映画は見たけど、たぶんあれは色々蘊蓄が省かれてるでしょう。あと、関連作品としてはSAS隊員がスカッド破壊任務の記録を綴った『ブラヴォー・ツー・ゼロ』も押さえとくべきか。
○疑問(ネタバレ)
・『アフガンの男』もマイクが主人公らしいけど、他作品でも主役はってるんでしょうか。ジャック・ライアンみたいに。
・あれ、ラマニってどうなったん…?

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が、生来のヘタレゆえ、なかなか数がこなせない。

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