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マルドゥック・ヴェロシティ

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○概要
虚無へと失墜した男、ディムズディル=ボイルド。
前作『マルドゥック・スクランブル』にて、武装した少女娼婦バロットの前に巨大な敵として立ちふさがった男。その軌跡を追う物語。


○あらすじ
大陸間戦争にて、友軍への誤爆事件を起こした空挺部隊員ボイルド。戦闘能力向上の為に慢性的に投与されていた覚醒剤が原因であった。事件のため軍を追われた彼は、傷痍軍人の回復と改造を目的とした研究施設へと身を捧げる。
命がけの検診により覚醒剤中毒から抜け出し、疑似重力を制御する能力を与えられ、そして万能の道具存在であり唯一無二の相棒であるウフコックを得たボイルド。同じような境遇の被験者達と共に、自らの存在価値を測る日々を過ごしていた。しかし戦争は終わり、彼ら改造兵士の有用性は疑われ始め、ついには当局が秘密裏に彼らを処分するため部隊を送り込む。一方的な虐殺となるはずであった攻撃に対し、能力を駆使して抵抗する被験者達。熾烈な戦闘のさなか、研究所と当局の協議が実り、条件付き停戦合意がなされた。その条件とは、職員と患者達に3つの道の何れかを選ぶことを迫るものだった。
閉鎖した研究所で、一生政府のための研究に従事するか。
街に出て、システムの支配者たる大企業の研究に献身するか。
街に出て、システムの被支配者たる市民を守ることで有用性を証明するか。
ボイルドと仲間達は、3つ目の選択肢を採る。即ち、自らの武装と能力を駆使し、重大犯罪に巻き込まれた証人を保護する「マルドゥック・スクランブル09法」の執行人となることを。
彼ら09部隊は、やがて都市開発と世代交代を巡る大きな陰謀に巻き込まれていくことになる。


○感想
『ヴェロシティ』は、『スクランブル』終盤でバロットに敗れて死に行くボイルドの脳裏に瞬く走馬灯として、彼の過去を追う物語だ。虚無を取り込み、虚無に取り込まれることで生存した兵士が、真の虚無たる死へと取り込まれようとするその瞬間に巡る回想。グラウンドゼロへの100カウントダウン。

語り口(文体)は「/」や「=」を多用した無機質なものでありながら、人物の語りは対称的にエモーショナルであり、それらはやがて二重螺旋となって終盤の加速感へと収束する。

百鬼夜行。登場する人物はまさにそう形容するにふさわしい。それは、禁断の科学技術の申し子である09部隊の面々や、もはや人間の態すらなしていないカトル・カールの連中のみに限らない。戦争を契機として栄えたマルドゥック市に蠢く、オクトーバー社やネイルズ・ファミリーなどの表裏の権力者たちの思惑や人格も、まさに百鬼夜行の態を為している。

上で述べたような特異な文体から生まれる緊張感と疾走感溢れる戦闘場面は、「超人vs.人外」の構図をとって、過激に迫ってくる。狂ったマフィアのボスによる幼児殺害事件を端緒として、マルドゥック市の過去・現在・未来を駆け巡るサスペンス面も、真相の暴露の緩急が巧みなためもあり、非常に楽しめる。

「異能集団同士の戦闘」の熾烈さ、「都市の表裏に錯綜する陰謀」の複雑さ。これらがこの作品をドライブする二軸だ。しかし、もう一つ、欠かせない軸の存在を感じる。
「語ることの確かさ、不確かさ」。『スクランブル』と併せて読んだとき、それが顕著に見えてくる。

『スクランブル』で過去の事件として語られていた事柄の多くが、『ヴェロシティ』ではリアルタイムで語られる。例えば、『スクランブル』にてフェイスマン教授が語った三博士の対立、バロットが語った兄の生き方、ウフコックが語ったボイルドが失墜した理由。これらは『ヴェロシティ』で語り直されたことで、全くと言って良いほど違う印象を見せる。

捜査の精密さと文体の無機質さの効果も相俟って、『スクランブル』より『ヴェロシティ』で語られている真相の方が確からしく見える。しかし、『ヴェロシティ』にて登場人物の告白や自白の形で語られた「真相」についてもまた、注意せねばならないのかもしれない(例えば、終章でグッドフェロウが語ったノーマの事情は、直前にニコラスがつらつらと語ったことを鵜呑みにする読者に対して注意を促してるのかも)。

そう、真相の多くは告白によって語られる。「/」「=」で整理された事項の整然さに対していささか歪さを感じる(※)ほど、当事者たちは多くを語る。しかし、語り手を通して語られている以上、虚実が入り交じることは留意せねばならない。

「真相」は、結局のところは人の「語り」によってしかわからない代物だ。しかし、人から紡ぎだされた「語り」は必ずしも真実とは限らない。
語りの真実性を高めようとする試みとして、『ヴェロシティ』では「拷問」という手段が執拗に取り上げられる。拷問の効果とは何か。苦痛を介して対象を支配し、それにより対象の価値を引き出すことだ。この点では、「都市システム」も、「拷問」と共通している。
対して、もとから存在している価値を力ずくで引き出すのではなく、価値を新しく生み出そうとする流れに乗ろうと欲し、苦痛を無理に操作せず、知的存在と一体のものとして受け入れるというのが09側のスタンスだ。「殺らねば殺られる」「平和の為に戦う」といったお題目に逃げず、その先にある価値問題に踏み込む、真摯なフィクションだと思う。

本編は、主人公が街へ帰ってゆく場面で終わる。これは『スクランブル』と対になっていることは言うまでも無い。マルドゥックシリーズは、あと二作続く予定だという。はたして、それらの終着点における主人公と街の関係は、どうあるのだろうか。

※…そんなわけで、真相語りの多さと戦闘シーンの長さには多少飽きが来る部分もある。しかし、『スクランブル』で語られた学生の麻薬事件を探る展開からラストにかけての加速は思わず飲み込まれた。


○まとめ
というわけで『ヴェロシティ』感想でしたが、実は結構『スクランブル』の内容を忘れている気がしてならんのです。何せ、読んだのがちょうど一年前だし、もう○○才(隠すのはただの意地ゆえ)を越えているため記憶力の低下も著しいもので。
劇場アニメも公開されるし(東京・大阪・名古屋のみの公開だがな!Fack! Sit! Gaddem!)、ウフコック視点の続編『マルドゥック・アノニマス』も出るという話だし、スクランブルを引っ張り出して読みなおそうか。でもどこにやったっけ(※引っ越しのゴタゴタで色んな物が行方不明。ピースウォーカーのソフトですら)。どうせなら近々出る改訂版を買うか。編集者のツイートによると、かなり直されているようだし。一部については、“当社比”233%も興奮度が異なるとか。改訂版の話が出た当初は、「内容は殆ど変わらない」って情報だったんだけどな。

『天地明察』のヒットもあり、ますます注目が集まる冲方丁。自分はまだスクランブルシリーズしか読んでいない。丁度「ユリイカ」で特集が組まれているようだし、それもチェックせにゃっ。


(以下、追記&おまけ。特攻野郎もあるよ!)

○追記
・『アノニマス』ではノーラ×バロットの強制百合展開あるよね?(←クズの思考)
・クリストファーさん好き好きっ
・徘徊者の異名を持ち重力を自在に操t
・テクノロジーにより発達した環境の描写に関して、他のSF以上に力を入れるのがサイバーパンク作品の特徴だと思う(まぁまだ自分はギブスンやスターリングの数作品を読んだくらいだけど)。筋肉や粘膜を思わせるような生々しい有機質で出来た床面やら壁面に、役に立つのか立たないのかようわからんギミックがついていたり。しかし、マルドゥックにではそういうところの描写はわりと少ない。自分は、マルドゥック市の街並みをそれほど「頽廃的」「雑然」であるとはイメージしていない。物語と直接関係の無いような市井の様子までをも詳細に描き出すようなフェティシズムは見られないためだ。
しかし、『スクランブル』のアニメ版PVでは、市は『ブレードランナー』やら『イノセンス』と似たような、東洋趣味交じりの“頽廃的近未来”のように見える。たしかに「虚栄と頽廃の街」と書かれてはいるんだけど、ううむ。


○おまけ(特攻野郎Aチームコピペ、09部隊セカンドチーム版)
大陸間戦争で鳴らした俺達09部隊は、有用性を疑われ当局に処理されかけたが、研究所を脱出し、市街に退避した。しかし、楽園でくすぶっているような俺達じゃあない。 筋さえ通れば金次第でなんでもやってのける命知らず、不可能を可能にし巨大な悪を粉砕する、俺達、マルドゥック法案09チーム!

俺は、リーダー・ディムズデイル=ボイルド。通称ワンダー。 重力制御と誤爆の名人。 俺のような天才炸略家でなければ百戦錬磨のつわものどものリーダーは務まらん。

俺はウフコック=ペンティーノ。通称ユニバーサル・アイテム。 自慢のルックスに、女はみんなイチコロさ。 ハッタリかまして、革手袋から64口径まで、何でもそろえてみせるぜ。

私は、ラナ・ヴィンセント、通称特になし。
チームの紅一点。
機銃掃射は、ボールベアリングと腕の良さで、お手のもの!

よおお待ちどう。俺様こそジョーイ。通称フィストファッカー。
ボクサーとしての腕は天下一品!
童顔?小柄?だから何。

ハザウェイ・レコード。通称レブナント。
再生の天才だ。心肺喪失からでも生き返ってみせらぁ。
でもナタリアだけは勘弁な。

俺達は、道理の通らぬ世の中にあえて挑戦する。
頼りになる神出鬼没の、特攻野郎マルドゥック!
助けを借りたいときは、いつでも言ってくれ。

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が、生来のヘタレゆえ、なかなか数がこなせない。

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