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2011年読書記録、あとベストテン

○序文
毎度のことですがお久しぶりです。
Twitterの呟き数はアホみたいに増えたものの、こちらはちっとも更新しておりませんでした。10か月もの間、ブログトップはエロゲのエロシーンの話。これはひどい。


○説明
読書メーターの機能を利用して、去年(2011年)に読んだ本を晒します。一月中にやろうと思ってゆるゆると書いていたんですが、何だかんだで月をまたいでしまいましたね。すいませんつい。


○内訳
読んだ本の内訳です。
・海外小説…22冊
・国内小説…16冊
・実録…11冊
・評論…2冊
わりと軍事系の実録物を多く読みました。ベストにも選んだ『CIA秘録』の物量は圧巻ですが、例の映画の原作でありもとは新聞記事らしい仕立て直しが巧い『ブラック・ホーク・ダウン』、『ブラヴォー・ツー・ゼロ』の作者が「それまで」の半生を詳細に綴った『SAS戦闘員』も良いものでした。「イラク以前」であるという泣き所はあるものの、民間軍事会社の成立を多方面から分析した『戦争請負会社』も忘れちゃならねぇ。
海外小説について言えば、SFはさほど多くないですね。初夏に読んだ『華氏451』がイマイチ合わなかった(しかしこの解説は本当にバカだと思う)のもあり、年末の『ディファレンス・エンジン』まで随分と空いてしまいました。ささやかなものですが、ラテンアメリカ方面を開拓できたのは良かったと思います。


○選抜
ベスト10とそれぞれの寸評を。

・ディファレンス・エンジン(ウィリアム・ギブスン、ブルース・スターリング)
ンだよコレ、大傑作じゃねぇかおい。お前らが読みにくい読みにくい言うから、随分遠回りしちゃったじゃねぇの。
いや素晴らしい。某プロジェクトの大将がオールタイムベストに推していたスチームパンク(の皮を被ったサイバーパンク)。蒸気コンピュータの開発から派生した様々な技術の象徴として、恐竜研究を持ってくるあたりでもうやられる。滅びた巨獣がどのように大地に覇権を敷き、そして滅び去ったのか。現実よりずっと早く恐竜の正しい生態を解明できても、その末路を斉一説的では無く激変説的に捉えてしまう…という「合理的な歪さ」に、このシミュレーション小説の縮図が込められている。これは確かに、懐古趣味を前提に書かれたのではなく、あくまで実際の歴史の裏に通ったテクノロジーの変遷を考察した小説なのだ。
あ、読みにくさについてはスキズマトリックスに比べれば全然でした。むしろ読みやすいくらい。あたしもう、黒丸訳は普通に馴染むカラダになっちゃってる…。

・夜の果てへの旅(セリーヌ)
第一次大戦の戦場の理不尽、それが銃後にもたらした混沌、帝国主義がしみこむ未開のアフリカ、矛盾を含んだ資本主義の最前線であるアメリカ、と20世紀前半の世界を流転した末、住み着くのはまた故郷フランスの貧民街。主人公は医学生であり、貧民街に住みつく直前に復学し医師免許をとって町医者として生活を始めるあたり、一応インテリ階級なのだが、そのあたりは割とさらりと流して、どうしようもない憂世への嘆きを作品全体に通してしまう、一種無力感を浮き彫りにするような筋運びは、皮肉やスラングに満ちた文体を通して、逆に印象に残る。「フランスのお文学なんてお堅そう…」なんてありがちな先入観で二の足を踏んでいたが、全然そんなことは無く、むしろ後述の某自己破壊小説に近いくらい。

・CIA秘録(ティム・ワイナ―)
読書メーターの上巻感想にはああしたネタを書いたが、まぁCIAなんて大体のフィクションでは硬直しきった官僚組織として描かれているような気もする。とはいえその実情を、成立から現在まで圧倒的な物量(※注釈の章の量がこれまたやばい)で描き切ったこの本を読むと、なおさらあのダメダメ感に実感らしきものを覚えてしまうのでした。
僕が多くの陰謀論に対してどうしても疑い深くなってしまうのは、やはりああいったものはえてして「組織は多数の人間によって運営される」という当たり前の前提をどっかにぶん投げて、少数の陰謀屋の万能性に拠りかかっているからなのだ。例えばCIAの失敗として名高いピッグズ湾事件。フィクションでは「たった一人内通者が居た」というような事項に失敗の原因全てが集約されることが多いし、空爆支援の中止についてはケネディ大統領の弱腰のせいにされる。だが実際には(※この本を信じるならば、という前提は勿論付くが)亡命キューバ人を1500人も集めて訓練する段階で情報などダダ漏れだったというし、ケネディ一人の愚策に責を求めるよりはむしろ組織間の連絡や、「成功すること」より「実行すること」に重きが置かれて暴走した事前準備などに原因を見るべきだったようだ。
この本は基本的には長官や担当官、そして政治家など、陰謀屋のリーダー的な人物に焦点を当てているが、やはり肝心なところでは「当たり前の前提」を失わず、組織としての成功と失敗を詳らかにしている。
「よく聞くCIAって実際にはどんな組織?」という疑問の答えを求めるにも、冷戦前・中・後の20世紀アメリカの黒歴史を知るにも、ただ単純に民主主義社会における組織の理不尽さを見るにも、非常に有益な上下巻。

・Fate/Zero(虚淵玄)
漫画やアニメ、ライトノベル、ゲームその他諸々、命をかけた極限の殺し合いゲームに参加する登場人物らってのは何とも「極端」だ。勝利によって叶えられる願いのため、あるいは戦いそのものから得る愉悦のため、己自身を一つの感情のみで出来た存在へと律して削りあげていく。しばしばその極端さは、ゲームそのものの厳しさ面白さよりも読者に強い印象を残す。例えば我妻由乃ちゃんは愛が重すぎて可愛い
この小説にしても、どいつもこいつも己の律に対して忠実で極端だ。そのようにして、あるものは破滅し、歓喜し、あるいは己を見出す。三人の王が聖杯にかける願いをそれぞれに語る「聖杯問答」など、それぞれの王がどれだけ自らの律に対して極端であったかを示すその激しさは、決闘そのものに勝るとも劣らない。
そしてその「極端さ」は、この物語の終わり…次の物語の始まりでもある…に、切嗣が、己が持てなかったもの、そして息子が持ったものとは何なのか、そのたった一つのことが明かされるそのときに、やりきれないほどの美しさをもって心に迫る。
まだまだその「極端さ」を持てていない少年が偉大なる王に魅せられて遂げる成長劇もまた、あらゆる意味で読者に与えられた救いだと思う。あれは熱い。
アニメの第二シーズンも楽しみですな。第一シーズンはさすがのクオリティだったけど、やや自主規制に足を引っ張られるところもあり、また、文字情報量の過剰さを処理しきれてないところもいくつか見られ、もっと突っ張ってほしいな、とも感じました。人間オルガンとか、ぱんつはいてないとか、な!
それと、不届きなことに自分、原作ゲームはまだやってないンですよね…総プレイ時間100時間と聞いて尻ごみしており…日頃「MGSファンを名乗ってる癖に1は古いからってやってない奴は死ね」とか喚きまくってるのに…これは良くない、良くないな…。

・悪童日記、二人の証拠、第三の嘘(アゴタ・クリストフ)
「悪童日記」「二人の証拠」と続いて「第三の証拠」へと至る三部作。はっきり言ってどれもそれぞれに亡命文学の傑作なのだが、単独では無く連作として見た場合、「こういうのもあるのか!」という驚きがなお強まる。というのもこれら三部作、舞台や登場人物に共通点はあるものの、しかしそれぞれ大きく設定が異なる。しかもその差異も「小説自体が主人公らによる手記であり、その真偽がわからないゆえに、どれも真実でありどれもが虚構である」という事情の上に揺れているのだ。例えば第一作では「ぼくら」という一人称複数をほとんど一人称単数のようにして使って日記を書いていた双子は、第三作では双子などでは無い他人であることになっている。そもそもこの連作、具体的な国名や年代を明かしていないため、どこの国のどこの出来事とも取れる。作者があえて母国語を使わずに書いたと言うことと併せても、こういった曖昧さがかえって真実味と切実さを持った普遍性を与えている。
作者は2011年の7月に亡くなったそうだ。ほかにもいくつか短編を遺しているようなので、それらも拾っていきたい。
ところでこういう、巻数をタイトルの中に入れる命名法ってなんか好きです。フルメタ短編とかゼロ魔アニメとか。

・ソラリスの陽の下に(スタニスワフ・レム)
やっと読みました許して下さいお願いやめてぶたないで。
レムを初めて意識したのはMGS3限定版の付属冊子だったと思います。ゲームそのものにはあんまり関係なく、冷戦の時代を生きた著名人の話を集めており、小松左京やら角川春樹やらも連れてきていて、妙に豪華な一冊でした。レムの文章としても久々の邦訳だったらしく、某プロジェクトの大将も驚いていましたね。その頃僕は小説など殆ど読んでいなかったのですが、あの息苦しい時代、その中心部たるソ連にあって作家として「同志」とともに生きたある日を回想した文章が印象に残ったものです。
亡くした恋人との邂逅というある程度わかりやすい形式は端から崩すためにとられているのですが(映画版では崩さなかったようだ、それでうまく行ったのか?)、それゆえに、全てを知りえることは無くとも探求を続ける主人公の、複雑さを増していくその考え方が浮き彫りになって、ソラリスの海というあまりにユニークな地球外生命体とのコンタクトが伝えられます。
あえてファーストコンタクトものとしてのスタンダードな形式もとっていません。研究して、遭遇して、感動して、というような劇的な最初の瞬間は、本編のずいぶん前に過ぎたようです。そしてそれゆえに逆に、主人公が「海」と接触する様は、本人にとっては新鮮さを増しているかのように思えます。コミュニケーションの可能性と不可能性、今ではどちらかといえば人間の機構や社会の生成というところに軸足を移して語られることですが、ひたすらに未知であるものへの探求を描くには、やはりこういうのがどうしようもなく強い。
タルコフスキーとソダ―バーグによる二本の映画版、それと検閲食らってないバージョンが載せられた愛蔵版との相違をまだチェックしとりませんね。サイバネティックス的な部分が当局の不興を買ったのでしたっけ。なにゆえそんなところに。歴史の問題としても面白いな。じゃぁ「サイボーグスペツナズ軍団上陸!」みたいなアホ映画は時代考証的にダメなのか。

・あなたの人生の物語(テッド・チャン)
やっと読みました許して下さいお願いやめてぶたないで2。
ロジックやガジェットの稠密さよりアイディアの精密さで攻めてくるSFってそういやあんまし読んでないな、と思ってたところで侵攻してきた圧倒的名作短編集。地球外生命体の文章記述法から時空認識の形態へ、研究者であり後に(現在でもある)母ともなる語り手の、回想(というのも正しくない)によってしめやかに語られていく表題作は現代の最先端をいくSFでもう言うまでもなく素晴らしい。それでいてバベルの塔やら精子ホムンクルスやらといった、今や懐かしさの果てに失われてしまった主題やら学説を下敷きにして、それでもまぎれもなく「いま」のSFアイディアを押しだしていく緒作もいい。いま流行りの意識の存在の問題だけではなく、これまた外せない生命科学にともなう倫理問題のあれこれについても書いてのけてしまうのですね。表題作と同じく小説としての構造自体からSFとして攻めてくる「0で割る」も美しすぎる。
個人的には「理解」のスーパー人間が好きですね。百舌谷さんの対ジジイ過去エピソードの元ネタってこれかよ。相変わらず妙なところを突いてくるなぁあの漫画は。
(日本の訳者やファンからも直接イジられるほど)寡作な作家らしく、日本で出た単行本はまだこれだけのようですが、最近SFマガジンに何度か載ってたようだし、そろそろ何か出るんですかね。これだってゼロ年代最高とか言われてるけど実は90年代がだいぶ混ざっているという。
そういやトップをねらえ2!の最終話タイトルってコレなんでしたっけ。1は見たんですけどね。

・戦争広告代理店(高木徹)
僕の好きなゲームの一つであるタクティクスオウガ、劇中の勢力図のモデルは、ユーゴ紛争だそうです。ドルガルア王はチトーだったりするわけですね。映画『アンダーグラウンド』なんかもいいですよね。しかし、この本で扱われてることは紛争そのものやそれに関わる人の様相だけに当てはまる話ではありません(もっとも、簡単な推移はしっかり書かれていますが)。
去年、漫画の表現規制にかかわる都条例の問題についてオタク界隈で騒ぎが起こりましたよね。オタク界隈から一般へと問題の重大さを伝える手段の一つとして、ニーメラーの「彼らがはじめに共産主義者を攻撃したとき…」がよく使われました。自分に直接かかわりが無いからと言って弾圧行為に無関心でいれば、いつか訪れる自分が弾圧されるそのときになって騒ぎ始めても遅い…という内容の詩です。あの詩を広める戦略、たしかに効果はあったのでしょうが、どうしようもなく致命的な弱さがあります。それはこの本で明らかにされていることと似ています。
ユーゴ紛争中に起こったとされている、セルビア人によるムスリム人の大量虐殺。このことを聞けば、誰もがあのホロコーストを思い浮かべるはずでした。しかしこのことを世間に広めて世論をムスリム人側に誘導しようとする「広告代理店」の担当者ハーフは、あえて「ホロコースト」という言葉を用いることを避け、新たに強烈なキーワードを選びました。それがあの有名な「民族浄化(エスニック・クレンジング)」です。この、まるで民族を汚物のように扱うことを想起させるキーワードはマスコミに送られる定期通信や政界を通して、世界中に広がり、やがて多国籍軍の対連邦介入へと繋がっていきます。
「ホロコースト」を使うと、「あのホロコーストとその問題を一緒にするな」という強い反発が避けられないのです。ましてや表現規制の問題は「所詮エロだ」という弱みがある以上、よりこの反発が効いてきます。
もっともその「民族浄化」の実態についても色々と疑義が挟まれています。実際の虐殺の証拠の有無、収容所の存在の不確かさ、ムスリム人側の残虐行為の存在。しかしそれらの不利な事実も、「代理店」は巧みな手腕で隠して世論を誘導していきます。報道に疑問を挟んだ現地の多国籍軍ベテラン司令官すら解任に追い込んだほど、苛烈かつ隠匿された戦略を以て。
「伝えたいことのみ伝える、伝えたくないことは伝えない、しかしあからさまな嘘はつかない」という報道編集の原則、ネットコミュニティに属する我々が「偏向報道」や「マスゴミ」といったキーワードで片づけてしまうことがどれだけ実際の世界で力を持っているのか、実感できるドキュメンタリーです。先程あえてエロ規制の問題に矮小化して例を挙げたように、戦争などの重大な問題以外にも様々に応用されているのです。「中国からの依頼を聞いてハーフが出発する」というラストで締めくくられていることが脅威をもって迫ります。決して胸糞のいい手段ではありませんが、そんなこと言って留まるよりは、しっかり応用すべきなのでしょう。
あ、テレビ番組版も見たいですね。

・ファイト・クラブ(チャック・パラニューク)
「えー自己実現?キモーイ!自己実現が許されるのは大学生までだよねー!」
「そうだ、自己実現に本質は無い。自己破壊こそが本質だ」
勿論フィンチャー監督の映画から参りました。最近コメンタリー聞いたけど、監督と主役一緒になっての批評家叩きが面白い。小説は絶版しているのでなかなか手に入らなかったのですが、twitterで「読みたい」オーラを放っていたら、親切な方から恵んでもらえました。感謝。
「ぼく」とタイラーの出会いの場面が映画とは違ってまた素晴らしい。ヌードビーチに柱を五本ほど突き立てて、影絵で仏さまの掌を造るんですよ。んで、そこに坐るの。掌は一瞬しか象られないけど、完璧な一瞬にはその価値がある。
映画では話が進むにつれタイラーの先鋭性についていけず疎外されていった「ぼく」が原作では協力的な分、一人称で語られる自己破壊の物語にはより切迫性がありますし、また、ラストも違います。この違いは現世利益と欣求浄土の違い、と纏める事が出来るかも。先程出会いのシーンについても触れましたが、仏教的な無常感を思わせるモチーフが多いです。
パラニュークの他の本、あまり手に入りませんよね。新作も訳されてないみたいだし。出版社や訳者のトラブルが噂されてるんでしたっけか。ファイトクラブの訳は非常にキレがあって素晴らしかったけど。
あと、フィンチャー監督と言えば最新作のドラゴンタトゥーの女を観に行きたい。
ぼくはレイモンド・K・K・K・K・K・ハッセル君だ

・族長の秋(ガルシア・マルケス)
ラテンアメリカシリーズのひとつ。バルガス・リョサのノーベル賞受賞を受けての集英社文庫の復刊でしょうかね。他にはボルヘスの『砂の本』など。
年度初めに読んだ『ペドロ・パラモ』もそうでしたが、残酷な父性を帯びた、醜い暴君による、小さな国家の独裁の様子が、時間と空間の交錯した構成によって描かれています。簡潔な文体であった『ペドロ・パラモ』に比べ、こちらは段落改行が全くないまま、語り手の切り替えも交えてひたすらに続く、装飾的な文体です。とはいえ不思議と読みやすく、それは何故なら、牛馬が走り回り妊婦が糞と子をひり出す異様な空間が形成された宮殿の様子が、異様なままに鮮明に伝えられるからです。ときおり入る「大統領」の母への呼びかけ、「おふくろよ、ベンディシオン・アルバラドよ」は孤独に苛まれる彼の叫び。もはやブラックユーモアの域に入りかけている彼の残虐な行為との対比と併せて、深い味わいを与えます。
最近だとネットではメキシコの世紀末っぷりがよく話題になりますが、ああいうイメージに合わせて読むのも一興かもしれません。南米というコンキスタドールの矛先の地での社会成立の歪さ、20世紀の歴史にも見える未熟な国家の芽生えとその虚構、そういった事情をあわせて、この「マジックレアリズム」世界を彷徨うべし。


○全貌
読書メーターの機能を利用したリストです。昨年は全てにコメントを書くようにしてたので、結構な量に。

2011年の読書メーター
読んだ本の数:51冊
読んだページ数:16576ページ
ナイス:84ナイス
感想・レビュー:51件
月間平均冊数:4.3冊
月間平均ページ:1381ページ

伊藤計劃記録:第弐位相伊藤計劃記録:第弐位相
この一年、ちびちびと読んでいた。亡くなってからもうすぐ三年となり、ますますこの作家の視点の鋭さへの憧れは募る。主にはブログのまとめである以上、書籍としては少々無理矢理な部分は目につくのだが(URLに言及のあるとこなどは削除されてる)、手元にバイブルとしておけるというだけで有難いのがファン根性。これからもしばしば参照させてもらうだろう。なんというか、よろしくお願いします。
読了日:12月31日 著者:伊藤 計劃
隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)
クリスマス中に読む、全てを呪咀しながら読む、という計画はアレしました。それはそうと、噂通りの酷い話だ。戯画的なまでに閉鎖された郊外住宅地の、社会から閉鎖された住宅の、さらに閉鎖された地下室の中で繰り広げられるあれこれ。しかも地下室は元は核シェルター(=冷戦パラノイアの名残)だったというのもまた、裏スタンドバイミーというか闇アメリカンビューティーな構造に寄与している。文体的にもシンプルな一人称で見る側の狂気を示す。個人的には、小学生時代の先生…基本はまともだが、今思い返せば共同責任主義が病的だった…を回想。
読了日:12月31日 著者:ジャック ケッチャム
ディファレンス・エンジン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)ディファレンス・エンジン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
冒険や陰謀といった聖杯探求的な部分が比重を増し(特に第四章)、激変的な盛り上がりを呈しながら、最後は細部にスプロールするように締めくくられる。この構造も、(恐竜の暗喩と同様)技術と社会の変革をたとえているものだろう。レイディ・エイダの演説や巻末の解説にあるように、自己言及を骨とした知性の考察は電脳三部作では薄かった部分であり、最後に明らかになるこの小説というテキスト全体の正体にも繋がる気持ちよさがある。
読了日:12月29日 著者:ウィリアム ギブスン,ブルース スターリング
ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
これは大傑作ではなかろうか。存在したかもしれない蒸気機関社会の暗喩でもある恐竜の扱い方が特に面白い。足をまっすぐに伸ばして陸上を歩む復元図はまさしく現代のものだが、絶滅の原因である隕石落下については未だ激変説的な捉え方を脱していないのだ。科学的に分析する力を手に入れながらも世界観の革新が完全ではない、現実の歴史に科学が果たした役割をも探る架空史。読みにくいと言われてたから敬遠してたが(笑)、むしろスターリングのアイディア鉱脈をギブスンが整地してくれてるような。
読了日:12月29日 著者:ウィリアム ギブスン,ブルース スターリング
フルメタル・パニック! アナザー2 (富士見ファンタジア文庫)フルメタル・パニック! アナザー2 (富士見ファンタジア文庫)
楽しげな新キャラや新ASも顔見せされ、主人公とヒロインとの距離にも戦いへの姿勢を通して変化の兆候が見られ、ますます楽しくなってきた。本編長編ほどではないながらも、一巻よりも一つの話としてまとまっていると思う。ラムダドライバほどの威力はなくとも、それだからこそロマ…ロックのある主人公機、ボスサベージなど、性欲を持て余す。
読了日:12月21日 著者:大黒 尚人
紅い花 他四篇 (岩波文庫)紅い花 他四篇 (岩波文庫)
象徴の狂気にのめり込んでいく表題作は無論、戦争のあとにこそ残る凄惨を皮肉的な語り口で綴る「四日間」、温室という閉鎖された舞台で「出る杭」でしかなかった樹を描いた「アッターレア・プリンケプス」、と粒揃い。それとこれはリズムある訳も心地よい。
読了日:12月21日 著者:ガルシン
あかね色シンフォニア (一迅社文庫 み 3-3)あかね色シンフォニア (一迅社文庫 み 3-3)
DTMは全然知らなかったけれど、初心者にも興味を持たせる語り口で、なかなか。百合分も補給。しかしキャラが多い割に出番に差があるし、これで続きがないのは残念…特にお姉ちゃんw。あまがみの方も読んでみよう。
読了日:12月21日 著者:瑞智 士記
伊藤計劃トリビュート伊藤計劃トリビュート
故人の小説は一人称で統一されていたが、あえてそれにそっくり従うことなく、「意識とは・フィクションとは・人とは何か」といった主題にメタ視点も交えて切り込む姿勢に好感。どちらかと言えばハーモニー系統の、個人の意識の変容にスポットを当てた作品が多いが、自明さの喪失(C・神林長平)という虐殺器官的な要素も見逃せない。頭の二作と後ろの二作が特に好き。もう少し詳しい感想も書きたい。
読了日:12月21日 著者:里野佐堵, 船戸一人, 水なづき蕎麦, 谷林守, 春眠蛙, 坂永雄一, clementia, 伴名練
夜の果てへの旅〈下〉 (中公文庫)夜の果てへの旅〈下〉 (中公文庫)
フランスに戻り、医大を出て、貧民街でこれまた夢も希望もない医師生活を始める主人公バルダミュ。舞台規模は前巻より狭まり、彼に付きまとうようにして現れるロバンソンとの対比が中心となる。教育の重要さをながらもあえて自らの学生生活は詳述せず、バリトン先生への教育の皮肉な結果をぶちまけるあたりが実に「らしい」。巻末解説に引かれたトロツキーによる評は的を射ており、同時に大々的な変革を夢見ずにしかし事を綴る様には共感を覚えてしまったり。
読了日:11月16日 著者:セリーヌ
夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)
狂奔のうちに戦場へ、復員してもなじめぬまま、搾取の地アフリカへ、そして現代の地アメリカへ。戦争と平和、未開と文明、互いに行き来しても破滅的な本質は変わらない。不満をぶちまけるような、しかし達観したような、されど俗っ気は保ったまま、感嘆符や倒置を活かした烈しい文体で綴られる世界。
読了日:11月15日 著者:セリーヌ
CIA秘録〈下〉―その誕生から今日まで (文春文庫)CIA秘録〈下〉―その誕生から今日まで (文春文庫)
フィクション上の万能組織はおろか、「君達の成功は秘匿され、失敗は喧伝される」という例の標語すら大嘘だというお話。元首に媚びなければ動けず、議会の圧力もまともに働かない。諜報機関の欠陥からもはや民主主義そのものの欠陥すら容赦なく暴きだす力作。下巻は911以後のCIAとアメリカが冷戦期と比較してもどれだけヤバかったかという話がやはり見所。
読了日:11月02日 著者:ティム ワイナー
CIA秘録〈上〉―その誕生から今日まで (文春文庫)CIA秘録〈上〉―その誕生から今日まで (文春文庫)
久々にワロタ こういうかなりどうしようもない泥沼官僚組織が本当のCIAなんだよな 下手なフィクションはやたら万能の陰謀組織として扱おうとするから困る
読了日:10月19日 著者:ティム ワイナー
Fate/Zero(6)煉獄の炎 (星海社文庫)Fate/Zero(6)煉獄の炎 (星海社文庫)
少年期の終わり、希望の果て、願いの代償、そして相克する虚無。すべてがゼロに向けて収束していく(1から先つまり原作もやらにゃあな)。「誓い」に答えを見出だして未来へ繋がられるラストがとても美しい。
読了日:10月19日 著者:虚淵 玄,武内 崇
Fate/Zero(5)闇の胎動 (星海社文庫)Fate/Zero(5)闇の胎動 (星海社文庫)
呵々々々、覿面じゃ喃。本格的に動き出した綺礼さんの悪辣さに震えるばかり。そして雁夜おじさん…。切嗣の起源も語られ、綺礼との虚無性の違いもかなり見えてくる。そしてライダー陣営に癒される。
読了日:10月19日 著者:虚淵 玄,武内 崇
Fate/Zero(4)散りゆく者たち (星海社文庫)Fate/Zero(4)散りゆく者たち (星海社文庫)
龍之介の哲学には自分も容易にはまり込んでしまう気がしてならなかったり、 …乱戦からまた乱戦へと連鎖する英霊たちのバトルの熱さと、陰謀から陰謀を紡ぐ魔術師達の冷たい戦い。この残酷な結末もまた覚悟の先にあるものだ。
読了日:10月19日 著者:虚淵 玄,武内 崇
Fate/Zero(3) 王たちの狂宴 (星海社文庫)Fate/Zero(3) 王たちの狂宴 (星海社文庫)
邪道対正道、人間対ターミネーターの魔術師勝負とくれば燃えざるをえない。それ以上に胸に迫るのが三王の問答か。良くも悪くも「強固な極端さを保った人間」でなければならない王という存在の何たるかを問い、今一度キャラクターと勢力図を明瞭に。この頃からいよいよセイバーたん総受けである。
読了日:10月19日 著者:虚淵 玄,武内 崇
Fate/Zero(2) 英霊参集 (星海社文庫)Fate/Zero(2) 英霊参集 (星海社文庫)
日常が終わり、緊迫の一騎打ちへ。そこに意気揚々と乱入する勢力、虎視眈々と監視する勢力。一気に宴が盛り上がるかのよう。ある意味で期待どおりの狂態を見せるキャスター、綺礼を唆すアーチャー、やっぱり惹かれるライダー、脇役も素晴らしい
読了日:10月19日 著者:虚淵 玄,武内 崇
Fate/Zero(1) 第四次聖杯戦争秘話 (星海社文庫)Fate/Zero(1) 第四次聖杯戦争秘話 (星海社文庫)
アニメから来ました。不届きながらゲーム未プレイ(ただしある程度のネタバレは知ってしまってる)。戦いの始まり、それぞれの覚悟を描く第一巻。アニメではカットバックで演出されていた切嗣と綺礼が互いの虚無性を畏れ惹かれるところが静かな胎動を感じさせる。
読了日:10月19日 著者:虚淵 玄,武内 崇
第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)
三部作の完結。とはいえ完全に明確な繋がりを定めることはできず、かといって勿論別個のお話であるはずもなく、そういった構造が、作品全体に通じる虚構・現実や匿名・署名、普遍・特殊の間の行き来とも絡み合って、亡命の物語をかたどっている。人称の使い方とフィクションの可能性についての考え方を変えた連作。
読了日:09月30日 著者:アゴタ・クリストフ
ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)
前作と間が空いてしまったけど読む。「ぼくら」という人称と語り口の使い方が衝撃的な前作と比べると“普通”に見えるのだが、終章でも言及されているような自明性の不確かさは常に漂う、これまた違った形で揺さ振ってくる作品。「どこにでもいて、どこにもいない」とは死者や兄弟のことであると同時に、この物語そのもののことでもある。さて、早速完結巻へ
読了日:09月27日 著者:アゴタ クリストフ
戦争請負会社戦争請負会社
(年代的に仕方がないが)「イラク以後」については触れられておらず、アフリカやバルカン半島の紛争を通して勢力をのばした数社を例に、この業界を分析する。無論その微細さは目を見張るのだが、それ以上に前半、貴族軍と傭兵と市民軍との関係の歴史をひもとき、「軍は官営されるもの」という現代の常識を覆すところが面白い。冷戦以後の紛争多発・軍縮傾向・世論迎合で軍に柔軟性が不足し、こうした“異色な天下り”である専門職が台頭する背景が合理性をもって理解できる。
読了日:09月19日 著者:P.W. シンガー
フルメタル・パニック! アナザー1 (富士見ファンタジア文庫)フルメタル・パニック! アナザー1 (富士見ファンタジア文庫)
つい様子見してしまったが、しっかりフルメタしているぜ。本編ファンへのサービスも利いているし。訓練業務提供型の民間軍事会社という設定も巧く、ソ連製のシャドウを使っているというあたりがくすぐる。時代にあわせて(←)主人公とヒロインの役割逆転か、と思ったらそういうわけでもなく、民間出身の主人公も特性を生かして活躍するよう。ヒロインのボケ方も宗介ともまた違った味が。ただ、もう少し一冊なりの締めをしてほしかったか。それじゃ私、ASの名前考えるね。
読了日:09月19日 著者:大黒 尚人
フルメタル・パニック!  マジで危ない九死に一生? (富士見ファンタジア文庫)フルメタル・パニック! マジで危ない九死に一生? (富士見ファンタジア文庫)
久しぶりのギャグ短編集。300回のこりゃやらざるをえないよね感も好きだけど、やっぱりテッサの墓参りがいいですね(毛色としてはサイドアームだけど)。墓参りの意味を教えあい、これからも生きていこうとする強さが伝わり。「もう一人の根源」である彼の謎が最後に解け、そこから歩みだすというおわり方。しかしテッサとレモンとのフラグは回収されないんでしょうか(笑)
読了日:09月19日 著者:賀東 招二
オーウェル評論集 (岩波文庫 赤 262-1)オーウェル評論集 (岩波文庫 赤 262-1)
帝国主義の理不尽を自らの体験を元に縮図的に描いた最初の二編や、ユダヤ人差別やナショナリズムや出版の自由と規制(自粛)をそれを受容する社会や人々の様相から分析した最後の三編が面白かった。正しさを顕示するための建前、自粛が高じた結果の全面的な沈黙などを正面から非難する姿勢は見習いたい。文学知識の不足ゆえ、文学批評系は理解しきれなかったものも多いのが無念。ところで、一年前に買った本を今崩すとか、いよいよつんでる。
読了日:08月16日 著者:ジョージ・オーウェル
鉄コミュニケイション (2) (電撃文庫)鉄コミュニケイション (2) (電撃文庫)
やっぱりバトルシーンの素材がいい…ガジェット趣味を駆使したメカニック・プログラム・タクティクスの細かさ。絶望への落とし方も相変わらず。しかしオリジナル作品に比べると突き放した面が少ないかな、とも。それゆえに人と機械とその間との心温まる関係がはっきりと描かれてるのだけど。原作は未読だったりする。ところで備蓄の瑞分はあと3、EGコンバットのみだ…
読了日:08月16日 著者:秋山 瑞人
鉄コミュニケイション1 (電撃文庫)鉄コミュニケイション1 (電撃文庫)
繰り返しの表現とか、ソフト面にこだわったバトル描写とか、やっぱりいちいち「巧いな…」と呟かずにいられない
読了日:08月16日 著者:秋山 瑞人
涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)
上巻読了後何となく二月近く積んでいたが、一気に。陰謀以降特に顕著な傾向なのだが、やはりキョンが決意を固める自問自答パートが長い。しかしそれも現在を大切にしようとする心の表れとして、分裂現象とともにある程度綺麗にまとまる。佐々木のキャラ造形は、オチ含めてかなりイイ。SF設定部分はやはりぼかしたまま締めるんだが、まぁそれは続編期待、ということで納得すべきだろうか。どうでもよさげなことだが「やっちまったか」「エロ本」とかを抑制してないのは、がんじがらめ気味なシリーズを抜ける一歩かも(笑)
読了日:08月01日 著者:谷川 流
恐るべき子供たち (岩波文庫)恐るべき子供たち (岩波文庫)
姉さん…。
読了日:07月27日 著者:コクトー
史上最大の作戦 (ハヤカワ文庫NF)史上最大の作戦 (ハヤカワ文庫NF)
「戦場の霧」がまだまだ濃かった時代、その最大の上陸作戦に関係した史料や証言を纏めあげた一冊。次々に変わる証言視点が、寄り集まって戦争の姿をかたどる。ドイツ上層部の失策(ロンメルの休暇、前後を通じての楽観ムード、虎の子の機甲師団の出し渋りetc)が連合軍に増して苦々しい。ただ自分、このへんの人名地名には疎いもので、もっと戦史知識を蓄え地図を広げて読むべきだったかもしれない。
読了日:07月23日 著者:コーネリアス ライアン
砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)
吉良上野介に関する記述の「誤り」に(それくらいしか詳しくない)僕は嬉々として飛び掛かろうとしたのだが、ふと、「誤り」と断ずるのは何を以てのことかと思い止まる。無論、今までに読んだ本から得た記憶を根拠としてのことだが、それを思うと、自分の中の迷宮(あるいは帝国の地図)の小ささに恥じ入り、同時にその深みを求める衝動に追われるしかないのだった。旅の栞の一冊としたい。
読了日:07月14日 著者:ホルへ・ルイス・ボルヘス
極大射程〈下巻〉 (新潮文庫)極大射程〈下巻〉 (新潮文庫)
「不器用な男たちだぜ…」と呟ける作品は良い作品。まさに狙撃そのもの、と言うべき忍耐から開放へのカタルシスもあるし、大満足。こうして読むと、あの映画は相当アレなんだな…。続きも読もうかな。何より“忠臣蔵”が気になるしw ところで冒険小説のプロ賛美・政治&マスコミ批判ってのは、パターン化していてもいちち気持ち良くなってしまうな(笑)
読了日:07月04日 著者:スティーヴン ハンター
極大射程〈上巻〉 (新潮文庫)極大射程〈上巻〉 (新潮文庫)
ええ、少々ことが複雑になってきて…
読了日:07月04日 著者:スティーヴン ハンター
華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)
勿論焚書のことのみを取り扱っているのではなく、人類と文化とその媒体となる頭脳とを極端な状況でわかりやすく論じている。次第に自由に鮮やかになる主人公の視線は本の成果だろう。クラリスやビーティ、教授といった魅力的・示唆的な人物も。しかしあくまでお伽噺或いは風刺を旨とす。まるで竹林七賢のような解決法(語り部の有効性というのはわりと大真面目に論じられたりするらしいけど)や戦争の捉え方、人と機構との間に働く悪意の作用が密に描かれてるわけではなく、1984程は揺さ振られなかった。ところで出版不況と結び付けた解説は下ら
読了日:06月22日 著者:レイ ブラッドベリ
ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)
やっと読(ry)。未知は未知のままに。つかずはなれずの接点。主人公により調査活動に劇的な進捗が起こるわけでもないという点でも、それは徹底されている。ただの宇宙探索ものに留まらない、人と海とを通して「不完全な神」の周辺で揺れる生命の姿を、幻想的な光景、科学的な考察、人間的な心情の各方面から描きだす、外宇宙以上に内宇宙に入り込む鋭さに飲み込まれた。検閲削除箇所と(レムが罵倒したという)映画版もチェックせにゃ。
読了日:06月09日 著者:スタニスワフ・レム
マルドゥック・フラグメンツ (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-11)マルドゥック・フラグメンツ (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-11)
豪華予告編集。逆に言えば、本編の大事なとこを整理してくれてもいるということ。変更された設定もいくつか見え、興味深い。短篇で死体の冷凍保存ネタなんかをさらりとロマンティックに使ってしまうあたり、気前がいいよなあ。アノニマスがますます楽しみになるのは勿論、スクランブル改稿版も読みたくなってきた。旧版では些かぶつ切りに見えた成長過程(精神傾向や戦闘技術、etc)がより筋の通ったものに改められたようで。
読了日:05月29日 著者:冲方 丁
族長の秋 ラテンアメリカの文学 (集英社文庫 カ)族長の秋 ラテンアメリカの文学 (集英社文庫 カ)
ラテンアメリカ版裸の王様?改行が全く無く、それでいて断りもなく話者が切り替わったりするのだが、不思議と読み進められる。そしてこのような眩暈を催す形式だからこそ、孤独な独裁者の姿無き姿が内から外から象られうるのだろう。人間離れしているようでどこまでも人間臭く、混沌とした国家と宮殿と自己とどこまでも癒着し、かつ乖離している権力者の詩。さて、積んでる百年の孤独も崩すか…。
読了日:05月26日 著者:ガルシア=マルケス
シャドー81 (ハヤカワ文庫NV)シャドー81 (ハヤカワ文庫NV)
その手が有ったか、なハイジャック小説。計画の積み上げも実行も駆け引きもスピードがあって、特に終盤はハラハラ。サンタさん大好き。超性能なヒコーキは一種の外挿と捕らえりゃ楽しめりゃおk。ベトナム戦争を背景とした政治と大衆の愚かさへの風刺も利いてるので(冒険小説らしい格好良いプロが表なら、役に立たない滑稽なアマは裏側)、そっちの楽しみも。後日談はもうちょい盛ってくれてもよかったかな、とも。
読了日:05月16日 著者:ルシアン ネイハム
フルメタル・ジャケット (角川文庫)フルメタル・ジャケット (角川文庫)
映画から来ますた。ある程度の筋は共通しているものの、やはり違いは大きい。まず、映画で高く評価された訓練所シーンは原作の六分の一に過ぎず、そして映画は原作の三分の二で終わっている。何より、レナードとジョーカーがそれぞれ「一人の人間を殺すまで」を描いた映画とは異なり、出征後の原作ジョーカーはすでに何度かの殺人経験を経てある種の受容の境地に至っている。ゆえにあのトドメに劇的な意味は無いし、彼の皮肉趣味と戦場を見つめる視線は冴えを増している。原作のみのパートである密林行軍、そこの研ぎ澄まされた描写が特に素晴らしい
読了日:05月09日 著者:グスタフ ハスフォード
あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)
やっと読みました。あ、やめて、ぶたないで。それはともかく、流石な出来。エイリアンとのコンタクトから言葉と認識と時間の問題を切り開く表題作の鋭さは勿論のこと、前成説のような前時代的な題材を用いながらも生命機能の解明とそれに伴う倫理問題を描いてのけてしまう「72文字」の器用さにも惚れる。様々な立場の人が技術進化に伴う価値観の変容を論じる「顔の〜」や、構造が美しい「0で〜」も好き。巻末解説にSFとFTの違いとして「前提としてテクノロジーがあるか神的な意志存在があるか」というようなことが書かれてますが、なるほど、
読了日:05月09日 著者:テッド・チャン
ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)
要するに「嘘は言ってませんよ。自分の利益に必要な事項しか言わないだけですよ」という、口喧嘩から報道まで通じる方法論。アレを徹底的に洗練し、戦争という極限の舞台に容赦なく応用した例と言える。 正直、胸糞悪い。が、そんな個人の感触など実質的には無意味であり、使うべきときは使う方法であることを認めて、知らねばならないだろう…個人も、集団も。彼我の相対化のもとの対話なんて、あらゆる意味で「余裕」が無ければ出来ないものなのだ。
読了日:04月18日 著者:高木 徹
ブラックホーク・ダウン〈下〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)ブラックホーク・ダウン〈下〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)
準備・戦闘・処理・検証を冷静に俯瞰したエピローグは、映画では見られない部分であり、また、この事件を総括する重要な章だ。「外の世界はソマリアを忘れた。国際社会の善意という大きな船は、出帆してしまった」、エピローグで語られるこの言葉は、忘れられかけたこの戦闘の一面を示している。解きほぐしようのない第三世界の問題にアメリカが積極的に介入しなくなった(言いかえれば看過しがちになった)一因としてのブラック・シーの戦闘。政府・指揮官・現場の間の齟齬は戦争状態でなくとも検証され続けるべき現代の難題だということを再認識。
読了日:04月08日 著者:マーク ボウデン
ブラックホーク・ダウン〈上〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)ブラックホーク・ダウン〈上〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)
映画から来ますた。淡々と米軍視点で現代戦を描いている映画と異なり、政治や軍事の背景も詳述され、何より現地の民兵や市民の視点からも事件が描かれているのが良い。次々に切り替わる視点人物の心情描写として現地の状況や情勢が語られているゆえ、実録物と言うより小説を読むような感触があるが、その形式を実現した膨大なインタビュー活動と構成力に頭が下がる。
読了日:04月08日 著者:マーク ボウデン
SAS戦闘員―最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録〈下〉 (ハヤカワ文庫NF)SAS戦闘員―最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録〈下〉 (ハヤカワ文庫NF)
下巻。連隊に入ってからの修練と任務。山場は中盤の突入演習、そして終盤の麻薬撲滅作戦だろう。前者は「ホントにこれ実戦じゃないのか?」と思わされる程、真に迫った様子が描かれる。実弾を用いる訓練や演習で仲間同士の信頼を高め、ときには政府首脳を参加させ、彼らとの信頼関係をも深めることの重要性も説かれる。後者の作戦は、中南米某国の麻薬工場襲撃。地元警察を訓練し、彼らとともに山中に潜伏、綿密な偵察の後の実行。麻薬戦争の堂々巡りを自覚しながらも、仕事をこなす本当のプロフェッショナルの姿が見える。終章の訴えも切実。
読了日:03月26日 著者:アンディ マクナブ
SAS戦闘員―最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)SAS戦闘員―最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)
初めて見た「人の死」、荒れた生い立ち、陸軍への入隊、アイルランドでの任務、そしてSAS選抜訓練。『ブラヴォー・ツー・ゼロ』ではさらりと書かれた、湾岸戦争以前の著者の半生、上巻。訓練と行軍、サバイバルの過酷さは読んでて渇いた笑いが出てくるくらい。また、特殊部隊だからこその自由さとユーモアの趣味にも学べるところも多いと思う。あと紅茶は大事。
読了日:03月26日 著者:アンディ マクナブ
パルプ (新潮文庫)パルプ (新潮文庫)
なにこれひどい(もちろん褒め言葉)。ダメ探偵どころかクズ探偵とでも呼ぶべき主人公が、よくわからん依頼人達からよくわからん依頼を受けるが、基本的には酒場や競馬場に入り浸ってばかり。たまに思い出したように捜査も行うが、まともに進まないどころか更なるトラブルを招いてばかり。しかし思い出したように放つハードボイルドなアクションや台詞もけっこうカッコイイから困る。開き直った題名に、やりたい放題な登場人物、進まないようで進む筋、そして超絶ダメ主人公。これはこれで強烈なスタイルなのだろう。ゲラゲラ笑いながら読むべし。
読了日:03月01日 著者:チャールズ ブコウスキー
戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)
「ベトコン一人殺すのに5万発」というのは聞いていたが、その裏にある心理学的理由についてはしっかりと理解していなかったように思う。「そもそも人殺しへの抵抗感は強烈なものだ」という当然と言えば当然ながらも真には軽視されがちな事実をもとに、豊富な実例と学説を引いて解いている。戦いと殺しに関する、様々な「常識」を揺さぶる一冊。
読了日:02月21日 著者:デーヴ グロスマン
魂の重さは何グラム?―科学を揺るがした7つの実験 (新潮文庫)魂の重さは何グラム?―科学を揺るがした7つの実験 (新潮文庫)
「魂の重さ」の存在とその測定法については中学の時に友人から聞いて驚き、その頃は殆ど疑いもせずに信じ込んでしまった。高校生になって疑い深くなり、しかし即断癖は抜け切っておらず「どうせ頭のおかしい科学者による奇説だろう」と片づけ忘れ去っていた。この本によって、久しぶりにその問題を思い出し、そして、仮説を立てて論理的に科学検証することの大切さと困難さを知れたように思う。魂の重さ問題以外でも、面白いところはたくさん。機械説・生気説論争など、当時と現在の常識の差異やそれに伴う論理展開の違いが興味深い。
読了日:02月08日 著者:レン フィッシャー
ファイト・クラブ (ハヤカワ文庫NV)ファイト・クラブ (ハヤカワ文庫NV)
ぼくがこれを知ってるのは、タイラーがこれを知ってるからだ。詩的と言うべきか、現実と虚構、過去と現在、具象と抽象を軽妙に行き来する文体で目を眩ませる。物質文明の中で肉体を屹立させ破壊衝動を探求していった先に待つラストでは、映画とは対称的な絶望と希望の形が示されている。映画版よりも、仏教的な刹那性が押し出されているのでは。特に原作とは違う、タイラーの出会いの場面。あの「掌」は孫悟空が落書きした御釈迦様の手を思い起こさせる。ぼくはレイモンド・K・K・K・ハッセル君だ。ところでこの作家も翻訳止まってるのね(泣)
読了日:01月25日 著者:チャック パラニューク
ブラック・ラグーン 2 (ガガガ文庫)ブラック・ラグーン 2 (ガガガ文庫)
ロットン大勝利。邪気眼ポエムとケータイ小説の奇跡の婚姻(笑)がなされている。様々なビッチを網羅したかったんだろう。そうに違いない。原作の復讐編はシリアスな展開で「街を描く」ということに拘っていたけど、このノベライズはギャグ交じりの展開でそれを補完している。特に、原作で描かれた二面性だけではイマイチ掴みにくかったエダの立ち位置が定まった。多くのキャラの本名がわかるのもちょっと嬉しい。ところでシェンホアさんは前作でも今作でも戦闘スタイルの弱点暴かれてたし、今作のラストでは(中略)だったりするので色々苦労症だ。
読了日:01月25日 著者:虚淵 玄
オデッサ・ファイル (角川文庫)オデッサ・ファイル (角川文庫)
これまでに読んだフォーサイス作品と比べても人物配置や展開に御都合主義が目立つが、やっぱり一冊の日記の発見が一国家の存亡の危機まで繋がって行く様子には燃える。「国民全員が罪の意識を共有しようとする動きが、かえって元ナチスを助けている」といった考え方をはじめとして、戦後処理と戦後社会の問題点にも多く言及されている。マサダ魂。
読了日:01月17日 著者:フレデリック・フォーサイス
ペドロ・パラモ (岩波文庫)ペドロ・パラモ (岩波文庫)
過去と現在、生者と死者。母と自分を捨てた父ペドロが支配する村を青年が訪れる場面から始まるこの小説は、父とそれに関係した人々が営んでいた荒廃した生活を語りだす。視点と時制を目まぐるしく変えることで、時間と生死の交錯するこのような表現が出来るということに驚いた。整理できてない部分も多いので、また読むと思う。間違いなく再読の面白さが抜群の小説だろうし。ラテンアメリカ文学にも注目せにゃ。
読了日:01月04日 著者:フアン・ルルフォ

2011年に読んだ本まとめ
読書メーター


○総括
総括、と書くとなんか血肉な光景が浮かびますね。何故でしょうね。
それはそうと、今年読んだものはわりと直接血肉になったんじゃないかな、と思います。というのも実録系がやはり直で体に馴染んでくれて。あの圧倒的な物量と己の適当な読書法ゆえに、抜け落ちてる部分の方が多いですが、最低限として引出しは形成された筈です。
来年度も似たような感じで、ゆるゆると読んでいこうかと。
小説に関しては、スラングとポエム混じりの一人称で世の中をさんざんに皮肉る、しかしそれでも生きていく、そんな作品を多く読んだ、ような。偶然とは思えぬ。
ではまた。


○余談
私事が立て込んでおり(忙しアピール)微妙なところですが、今年は更新増やしたいですね。年度替わればかなり緩くなるはずですし。
いくつか書きたいネタもあります。

・あの日舐めた糞の味を僕はまだ忘れられない、的なアレ
再放送で通して鑑賞した「あの花」のガッカリ感は未だ癒えませぬ。最終話の、大事なところをどこかにすっぽかしたお遊戯会エンドの上滑りっぷりについて、長々と文句を垂れたいところです。何がめんま見―つけた、だ。今年度はTrue tearsやシムーン、放浪息子など、名作と言って良い岡田麿里脚本アニメを見て、その作劇や演出について色々思うところもあったので。

・リムられすぎた人間はいつの日かドラゴンになるんだ、的なアレ
twitterには入り浸っていたんですが、これまた色々ありましたね。まぁ上の様な「これ褒めてる奴バカじゃね」的なことをよく呟いてるせいもあり、いきなりリムられることの多いこと多いこと。「フォロー・リムーブお気軽に」とか言っておきながら、そこそこ仲良くやってた自信のある人からリムられると割とヘコむものです…。そんな思い出やら逆ギレやら、つらつらと。

・堕ちるはずの無いブラックホークが堕ちた、的なアレ
シムーンとブラックホークダウンを組み合わせたまったく新しい実況テンプレ、とか考えたけどこれ絶対先にどこかの誰かがやってる。

こうして書いていたらわりと満足してしまった感じがしますが、まぁ、それじゃ、また、いずれ。




あ、あと、いい加減ブログタイトルを「千倉歩戦記」あたりに変えようかしら。

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Solidrb

Author:Solidrb
自他ともに認めるMGS(メタルギアソリッド)フリークス。
その証拠に、当初はもっと幅広く話題を扱おうかと考えていた(←大嘘)このサイトも、ずるずるとMGSネタオンリーブログになりかけてきている。

SFを中心に、様々な作品に触れようと目論んでいる。
が、生来のヘタレゆえ、なかなか数がこなせない。

twitterや読書メーターもやっているので、そちらにも是非いらしてください。

○注意書き
・コメント、拍手
常に餓えておりますので、古い記事にもぜひ気軽にどうぞ。名前欄はテキトーでもおkです。
(今後どうなるかはわかりませんが)全レス主義で臨みます。
コメントは承認制を採っていますが、スパム以外は基本的に消さない方針です。

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コメント同様、承認制ではありますがお気軽にどうぞ。
ただし、記事内容と関連性の無い宣伝トラックバック(※どう見てもツールでキーワード検索かけて貼っただけの、商業的性格が強いものなど)については削除することにしました。

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