スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2012年読書記録、あとベストテン

○はじめに
あけましておめでとうございます。マヤ歴終われど地球は終わらず。無事にやってきてしまったこの2013年正月、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
僕におきましては、センター試験が迫っていますが、前年の読書記録記事は毎年書こうと決めているので(と言ってもまだ二年しか書いてないけど)、一月のうちに書いておこうと思ってこうしてパソコンに向かっているという次第です。そう、センターなのですよ。
…………。

いよいよ明日がセンター試験本番ですよ!
むっちゃドキドキしてきた…。
受験生の皆さん、今日くらいは勉強は休んで明日に備えますよね?


……?
!?
そうだ!今年はセンター試験なんぞ受けなくてもいいんだ!もう四捨五入して十回は受けてるから飽き飽きしてたとこだったんだぜ!やった!エロい!!

……というわけでいいかんじに空回ったところで、2012年に読んだ本のベスト10と短評を書こうと思います。例のごとく、読書メーターの機能を利用して。


○概略
47冊。
とうとう50冊を割ってしまいました。毎年毎年「もっと読みたい」などと意識の高いことを言ったり、たまの読書の話と言えば流行りの国内ミステリの話題ばかりの同級生の横で孤高を気取ってるわりに、週一冊のペースすら保てなかったんですか……しかも、去年は一昨年より明らかにヒマだったのに……まったく、情けないですね……。

もっと読みたい、ですね!

……。
ジャンルの内訳としては以下のようになっております。
・ライトノベル 14冊
・海外冒険小説(スパイ小説等) 10冊
・海外文学(SF込み) 7冊
・国内SF 4冊
・国内冒険小説 2冊
・国内時代小説 2冊
・歴史・軍事等 3冊
・機龍警察 4冊
・機忍兵零牙 1冊

「もっとラノベで冊数稼いどけばな~」的な本末転倒にも程があることを考えていたけれど、こうして数えてみると、普通にラノベの割合が多いという。そういや「アニメだけじゃなく原作も読んどこう」で読み始めたとらドラが止まっているな。あとEGコンバットの最終巻が楽しみだよ、な!
上記の内訳で、「海外SF」を「海外文学」の中にまとめてるのは、どっちに分類すべきかわからないものが多いからです。『すばらしき新世界』みたいに古典SFというより単に古典文学として扱われるものとか、『殺す』みたいにもともとサイエンスサイエンスしてないSFを書く作家が書いた、現代小説とか。
「今年はスパイ小説をたくさん読んだな」という気がしていたんですが、基本的にスマイリー三部作とマクレディ四部作をさらっただけだったんですね。ほんと気のせいって怖いですね。
あ、『機龍警察』が単独ジャンルになっているのは、ツイッターでとある人が「機龍警察はジャンルとか超越した、一種のライフスタイル」などと言い放っていたからです。かく言う私も、すっかりはまってしまい、知り合いにオススメ小説を聞かれると脊髄反射できりゅーけーさつと叫んでしまう病気にかかっています。
あと『機忍兵零牙』も単独ジャンル……というかライフスタイル……いや、あれは「忍法」ですね。読んだ人間が何らかのジツ……ちょうど作中の黒薙怜門のジツのような……にかけられてしまう、忍法。というか機忍法。そう、機忍兵零牙は機忍法なのです。何を言ってるのかわからねーなら読んでください!!


○選抜
ベスト10とそれぞれの短評をば。

1・機龍警察(月村了衛)
『機龍警察』、『機龍警察 自爆条項』、『機龍警察 暗黒市場』の三篇。
月村了衛の名前は、一昨年に見た少女革命ウテナのいくつかの脚本で意識することになりました。「選ばれた者」である主役キャラクターらの影に隠れた、「選ばれなかった者」である脇役キャラクターの割り切れない心情を鋭く描き出した月村脚本回には非常に感心したものです。機龍警察シリーズでもそういった要素があり、魅力となっています。
しかし、単純に警察小説……というより冒険小説としても、とても楽しい。「冒険小説」という言い方は、かなり広いジャンルを指します。警察小説のようにサスペンスやミステリめいたものも含むでしょうし、世界を股にかけるスパイ小説、硝煙の匂い立ち込めるミリタリ小説なんかも含まれます。そういったジャンルの面白さが、ぎっしり詰まっているのです。
無論、「機甲兵装」というパワードスーツ系ロボットが普及し犯罪にも利用されるようになった世界に、「龍機兵」というさらに進んだロボットが投入されるという一種の外挿的なSF要素もありますし、そっちの方面でも楽しめるでしょう。
アニメでも見られたキャラクターへの書き込み、そして冒険小説らしい背景と展開の緊密さ、そして近未来SFとしての地続き感。これらがしっかり噛みあったこの小説シリーズ、
一年に一冊というそれこそ海外めいたペースではあるが(※1)、これからも実に楽しみです。
一作目は「導入」という感じなので自分はそこまで引き込まれなかったが、二作目の踏み込み方にはごっそり持っていかれ、気づいたらハードカバーで三作目を買っていました。そんで、twitterでは日々ドラグ・オンだの、みどライザだの、機忍法だのと騒いでいる。おすすめです。


2・スマイリー三部作(ジョン・ル・カレ)
『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』、『スクールボーイ閣下』、『スマイリーと仲間達』の三部作。
『ティンカー~』を原作とする映画『裏切りのサーカス』(現代は『ティンカー~』のまま)が公開されると聞いたので、それを切っ掛けに買いました。とはいえ、お世辞にも読みやすいとは言えないので、読了にはかなり時間がかかってしまいましたが。あ、ちなみに映画も名作です。ちょっと初見ではわかりにくいかもだけど。BD買いました。
自分としては、『スクールボーイ閣下』の下巻が好きです。上巻までだとちょっと退屈ですが、国家や組織の間で利用される存在としてのスパイの現実的な悲哀を描き出すこのシリーズにあって、さらに濃く、没落エリートとしての彼らの側面を活写した下巻は素晴らしい。『寒い国から帰ってきたスパイ』との相似関係を思うと、ますます。


3・サバイバー(チャック・パラニューク)
ファイトクラブと同じ作者。427ページから始まって1ページで終わるという変わったページ立てをとっている。構成的にはファイトクラブとそうは変わらないが、頭の中を一行知識で埋め尽くされることで予め発展性を奪われてしまっている主人公が、一種の原点を目指して徘徊する様はより痛々しい。体系的な知識や円熟した人間関係が無いという点では、わりと自分にも近いので、なんというか、その、死にたい
|←クリード教|   オワタ┗(^o^ )┓三


4・卵をめぐる祖父の戦争(デイヴィッド・ベニオフ)
レニングラード攻防戦を舞台にした、凸凹コンビの珍道中。「絶望の中の希望」とかそんな類型的なところにも陥らず、まさに友情あり笑いあり恋あり、しかし悲哀や残酷もある、そんな楽しい青春冒険小説です。訳も軽快で、ユーモアも効いていて、とても良い。


5・すばらしい新世界(オルダス・ハクスリー)
その内部に居るものにとっては「これが当たり前」であり、疑問を持てる余地など全然ないからこその、ディストピア。
ぼくはミスターサヴェッジだ。


6・鷲は舞い降りた(ジャック・ヒギンズ)
イーグルハズランディッド。
いい男たちですよ、これは。これが冒険小説だ、というところなんでしょう。
「おすすめ」と言うのも恥ずかしいくらい、必読。
続編の「飛び立った」は相当アレだと聞いたが、どうなんでしょ。


7・ペイルライダー(江波光則)
いじめの『ストレンジボイス』、新興宗教の『パニッシュメント』も良かったけど、自分が気に入ったのは最初に読んだものであるこれでしょうか。ささやかな詐術と暴力を効率よく、小気味良く用いてスクールカーストをかき回していく主人公のやり方、ちょっと捻くれた人なら「これが俺のやりたかったことだよ!」と思うはず。タイトルはイーストウッドの西部劇からとったものであり、「流れ者が己の過去と対峙する」という西部劇の表側と「外からやってきた小規模な暴力がコミュニティをかき回す」という裏側が、互いに意地悪い形で、表と裏とを逆転したような小説。「プロジェクト・メイヘム」なんてワードもあったり。
作者の江波光則、星海社で魔法使いものをやるって聞いたけど、良くも悪くも気になるな…。


8・デミアン(ヘルマン・ヘッセ)
卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。
雛は我らだ、卵は世界だ。
世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。
世界の殻を破壊せよ、世界を革命するために!


9・E.G.コンバット(秋山瑞人)
これで秋山瑞人の単行本発行作品は全部読んでしまったことになるのか……。ロボットをハードウェアとして、それを司るソフトウェアの操り方の面からも動かしていくサイバーパンク精神溢れる書き方。「個性派揃い」とか「生々しい」などと安易に片付けてしまうのは勿体ない、濃ゆいキャラクター描写。やっぱり流石です。最終巻が楽しみ、だな!


>E.G.コンバットFinal(予定。『電撃hp』Volume10では2001年6月10日に発売予定となっているが、10年が経過した2011年6月現在でも発売の兆候はない。ちなみに作者は講演会で、上下巻バージョンと全3巻バージョンのものは最後まで書き上げ編集者に渡している。その原稿データは手元にない。現在の全4巻バージョンはネタを使い切ってしまっており、続きを書くのはちょっとしんどい。と述べている。)

……。


10・天地明察(冲方丁)
何をやるにもいちいち覚悟を決める冲方節(だと自分は決めつけている)。これも実に決まっています。ふわふわした立場であることを「春の海」という名前にも込めてしまっている主人公が己の立場を自覚し、変わりゆく時代にあって「世の価値観を定める」という壮大な仕事に従事する己がなすべきこと、己だからなせることへと向かっていく、その前向きさが心地よい。天才的な能力を持ちながらも、相応しい立場を持っていない関孝和が春海を叱咤しつつも研究成果を託すところなんて大好きです。刀が象徴としての意味しか持たなくなった太平の世だからこそ求められる、学問の意味。
だからこそ、映画版の、「反対勢力からの妨害」を「刀」を用いて描いてしまったこと、それを経た後半、宮崎あおい演じる嫁が画面に出張ってきて夫婦愛推しになったのは残念であった。基本的には、学問の楽しさをしっかり描いていて、よく出来ていたとは思うのだが。そこまでわかっていながら、どうして、


番外・屍者の帝国(伊藤計劃、円城塔)
なんだか、自分の観測範囲(ぶっちゃけtwitter)だと、みんながみんな感想を避けている気がするんだが……。
ちょっと箇条書きしてみよう。
・伊藤的なミリタリ趣味はわりと少なめ
・作者死亡の事情から来たメタフィクション構造(ネタバレ)
・予告されていたイスラエルネタ等が少なめ
・結びにクオリアを持ち出したこと(ネタバレ)
・伊藤に文体似せているけどやっぱり円城的読みにくさがある
これらは、自分としては、気に入ったとも気に入らないとも言えないところなんですよね。
歴史改変や古典引用、あるいは映像作品パロディに伴う膨大な教養と取材には頭が下がるし、特に日本編における屍者運用のアイディアの豊かさも楽しめたのですが、どうもやっぱり、自分の中でこれといった結論が出しにくい、もやっとしたものはあります。
他の人と、色々話してみたいのですがね。
うーん、結局、自分も感想を避けているのか。


番外2・機忍兵零牙(月村了衛)
凡そこの世に非ず、次元の彼方、別の世界より来たる者を忍びという。
光牙とは光の牙、絶望に抗う伝説の忍び。
人は知らぬ、何処より彼等は来たるのか。
人は問わぬ、何故に彼等は戦うのか。
訳は要らぬ、夜の淵より出で、光の牙にて闇を裂く---それが、光牙のさだめなれば。


番外3・桜~マリア様の放課後(北都凛)
強制されたレズ行為とはいえ、キスを交わし双頭ディルドで繋がりあうと、心まで一つになったような快感に襲われてしまう。


○総括
その他、いいものがいくつもあります。基本的にだいたいオススメです(適当)。
読書メーターの機能を使って、それらを以下に載せます。
短評は全部書くようにしています。

2012年の読書メーター
読んだ本の数:47冊
読んだページ数:16749ページ
ナイス:166ナイス
感想・レビュー:47件
月間平均冊数:3.9冊
月間平均ページ:1396ページ

カリブの失楽園 (角川文庫)カリブの失楽園 (角川文庫)感想
最終作。今回のマクレディの役回りはスパイマスターやスパイというより探偵。大英帝国が手放した多くの植民地の中では小さな島国を箱庭として、その国の越し方と行く末に絡んだ殺人事件の謎を追うプロットは、四作の中でも一番面白かった。シリーズとして総評すると、回顧録の形式をとってスパイ小説の美味しい素材をバリエーション豊かに無駄なく調理した中編集、ということになるのだが、「スパイの時代の終わり」にあってそれらを俯瞰している審問会のパートをもっと盛ってほしかった気もする。それをやると野暮になるのかな。
読了日:12月27日 著者:フレデリック フォーサイス
戦争の犠牲者 (角川文庫)戦争の犠牲者 (角川文庫)感想
あれやこれやの手続きを経て西側から第三世界へ傭兵のための武器を流し込む「戦争の犬たち」とは対称的に、単純な方法で第三世界から西側へテロリストのための武器を流し込むのを止める話。既にソ連は物語の表側から引き、彼らが中東に残した武器を巡って、カダフィやIRAといった面々が駆け引きをする。今回もマクレディはスパイマスターとして立ち回るが、雇うスパイは前二作よりは素人的な人物。彼に真偽入り混じった虚飾を施し策を弄する様子はまさに「騙し屋」といったところ。
読了日:12月27日 著者:フレデリック フォーサイス
売国奴の持参金 (角川文庫)売国奴の持参金 (角川文庫)感想
『騙し屋』に続く、マクレディ・シリーズ二作目。今度は亡命劇から始まる二重スパイ疑惑の話。ケンブリッジ五人組やジム・アングルトンなど、多重スパイと防諜に関する実話がプロットに相似する形で挿入され、ますます「スパイたちへの鎮魂歌」といった趣が強くなる。続きも楽しみ。
読了日:12月12日 著者:フレデリック フォーサイス
騙し屋 (角川文庫)騙し屋 (角川文庫)感想
冷戦終結に伴う人員削減と組織健全化のために職を失うベテランスパイの回顧録。第一巻の今作では、東西ドイツを舞台に、機密情報の受け渡し工作が描かれる。中編程度の尺ということもあり、プロット優先と呼ぶべきスピードで話が進む。失われゆく時代や利用される人々の哀愁といったものはさほど濃密には描かれないが、このシンプルさも、三人称視点の回顧録としての形式に寄与してるのではないか。
読了日:12月12日 著者:フレデリック フォーサイス
サバイバー (ハヤカワ文庫NV)サバイバー (ハヤカワ文庫NV)感想
文章をそして主人公を埋め尽くす発展性のないトリビアと、予め彼から奪われている発展性。「その場限り」の繰り返しで出来てしまっているのは、何も特殊な環境で生まれ育ってきた主人公だけではない。相変わらず軽快な調子で、油っこい皮肉もなく、淡々と語られる独白体が(翻訳含め)、酩酊感を醸し出しており、心地良い。湿っぽい切実さは抜きにして、ただただ刹那的な言動の集合に過ぎない人々の姿を貼り付けることにより、生の実感と孤独を浮き彫りにする手法に惚れ惚れ。で、これと前作以外は中古で五千円するのか。いい加減にしろ。
読了日:11月24日 著者:チャック パラニューク
デミアン (新潮文庫)デミアン (新潮文庫)感想
ウテナから来ました。「思春期の頃に読んでおくべきだった」とも少しは感じたが、自分には今こそがベストタイミングか。善か悪かの煩悶から、それらを同時に持つ存在の理解、己の内にある運命に対する自覚と帰依、といった道程を、適切な距離で見られる時機というのは前にもなかったし後にもそうはないだろうと思うのだ。聖邪と夢現が入り組みながらも空論に流れることなく己を見つめること。この物語では戦争というあまりに大きな変化が最後に訪れるので、軽々しく「感情移入」するのもよくないが、自分にもそうした変化が来ることは確信している。
読了日:11月11日 著者:ヘッセ
機忍兵零牙 (ハヤカワ文庫JA)機忍兵零牙 (ハヤカワ文庫JA)感想
別に「機」の字はいらないんじゃないか、と思ったのは、SF設定もそこまで詰められてるわけではないし、ゴシックと言いつつもどうしても日本の戦国時代あたりの世界観が前面に出てるから…なのだが、それはともかくとして、ボンクライズムを冒頭のポエムから全開にしているのがイイ。バトル中心であり、オチも締まってるとは言い難いが、講談本風味(と、いうのか)の文体もわりと好きである。
読了日:11月9日 著者:月村 了衛
ミラーシェード―サイバーパンク・アンソロジー (ハヤカワ文庫SF)ミラーシェード―サイバーパンク・アンソロジー (ハヤカワ文庫SF)感想
序文&「ガーンズバック連続体」のコンボの凄さは当然として、自分が好きなのは「夏至祭」と「ストーン万歳」。それぞれ、ドラッグとサイボーグ、つまり生体内部からと生体外部(機械)による一般人の生活と意識の変化を描いている。(「夏至祭」でも強調されている)アートとしての側面についてもそれぞれの作家が考えを投影していることは、例えばロックミュージックを主題としたいくつかの作品に顕著であるが、このことからも「運動としてのサイバーパンク」の姿勢が伝わる。電脳にダイブしてハックする系の類型はひとつもない。
読了日:11月6日 著者:
桜-マリア様の放課後 (美少女文庫)桜-マリア様の放課後 (美少女文庫)感想
強制されたレズ行為とはいえ、キスを交わし双頭ディルドでつながり合うと、心まで一つになったような快感に襲われてしまう、ということがわかった。
読了日:10月17日 著者:北都 凛
スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))感想
前作で苦い結末を経て再び在野の身となったスマイリーが、ある亡命者の死の謎を探るところから始まる、探偵物語としての性格も強い、三部作最終巻。これまで機械じみた完璧さを思わせてきたカーラもあくまで人間であり、それ故崩壊した…という図式はソ連の諜報機関、そして国家そのものにも拡大できるもの。不貞の妻・アンへの複雑な愛情をカーラにつけこまれたスマイリーが、こうした手段で「勝利」を手にするまでの懊悩。ライターを介して合わせ鏡のように在る二人の姿。極限まで書き込まれ、かつ極限まで構図を単純にされたラストは感慨深い。
読了日:10月9日 著者:ジョン・ル・カレ
フルメタル・パニック!  アナザー4 (富士見ファンタジア文庫)フルメタル・パニック! アナザー4 (富士見ファンタジア文庫)感想
主人公が一線を越えるまで(要するに人殺し)の変化を慎重に描く姿勢は、第三世界の紛争を舞台にした前半だけでなく、懐かしのあの人を出して(これまた溜めてた展開)コメディやりつつ人と銃との関係について述べた後半にも表れている。リーナの彼に対する考え方や、彼女自身の過去がなかなか明かされないのでやきもきするが、それも一線を越えた後でやるんでしょう。んで、エピローグは引き作り。このシリーズの「色んなASを見せる」という主旨も忘れていないことがわかる巻末AS設定資料の充実ぶりもあり、次巻のことがわたし、気になります!
読了日:9月30日 著者:大黒 尚人
機龍警察 暗黒市場 (ミステリ・ワールド)機龍警察 暗黒市場 (ミステリ・ワールド)感想
本文中でも言及される"相似"の構図が豊富かつ丁寧に巡らされている作品は良い。今作のエッセンスの一つでもあろう某スパイ小説もラストを印象的にしていたのはそうした構図だった。"灯明"と"影"の対立には同性愛的な濃厚さが。相似が生むコントラストの中にあって曖昧な境界を各自がいかに捉えいかに生きるか。主人公ユーリの悲運ながらも愚直な生き方は勿論、事件を取り巻く警官とそれを支える者達の絆の深さなど、泣ける箇所も沢山。それでいて"手槍"とか"ジャグリング"とかロボアクション部分のボンクラ感も壮絶に素晴らしいから困る。
読了日:9月26日 著者:月村 了衛
機龍警察 自爆条項 (下) (ハヤカワ文庫JA)機龍警察 自爆条項 (下) (ハヤカワ文庫JA)感想
人の手と手によって結ばれ或いは裂かれる関係を丁寧に描いた作品は名作。二度振り払ってしまった手と、手紙と、手話と。それらが暴力の連鎖の中で戻らなくなってしまった中で見出した答えの一つとして、ラストの「手話」は象徴的であると思う。それぞれに部内でペアを作られて配置された主役らの関係性は、今回主軸となったライザ・緑だけでなくそれぞれに見せ場があり、いやがおうにも次の巻を期待させる。部内ではペアらしいペアのない沖津は今回は詩人とのチェスゲームでその力を見せたけども、まだまだ底は見えない。
読了日:9月22日 著者:月村 了衛
機龍警察 自爆条項 (上) (ハヤカワ文庫JA)機龍警察 自爆条項 (上) (ハヤカワ文庫JA)感想
めっちゃクオリティ上がった。前作で気になった構成(伏線の回収を急ぎがち)や文体(地の文少なめ、体言止め等の手法が逆にスピードを殺していた)も改善。時間を前後して語られるライザの過去編は迷いに満ちていて読み応え充分だし、彼女と緑の関係がそれぞれの父との関係を通して変わっていく様が特に素晴らしい。全体を通せばアクションの比重は少なめであるが、だからこそ捜査や回想のパートの細かさがあるのだし、優れた冒険小説ってそういうもんではなかろうか。
読了日:9月22日 著者:月村 了衛
機龍警察(ハヤカワ文庫JA)機龍警察(ハヤカワ文庫JA)感想
百合っぽい(笑)女学生らが登場即圧死するとこなど何らかの作家性的なアレを感じたのだが、「罪のない人が死ぬ様で悪役への憎悪と主役への同調を誘う」というような厭らしさは感じない。というのはあくまでプロとして動く登場人物達を、傭兵という特殊な職業である主人公の独特な思考を軸にして描いてるからだろう。ベタなやりとり多めだし、文体も体言止め等の手法がまだこなれてないが、まだ序章なのだろうし、評価も高いようなので(題名の異様さも気になるw)続編に手を付けるか。ペアを作られて配置された人物らの関係性も気になる。
読了日:9月18日 著者:月村 了衛
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)感想
そんなわけで上巻と裏腹、手繰るページがなかなか止まらなかった下巻。ウェスタビーの東南アジア行はドンパチなど入れずとも背景と心理を書き込めば上質なスリルが染み出てくることを教えてくれるし、それぞれの人物がかかえる空虚は濃密に語られるし(矛盾した表現だが)、時折差し挟まれる「後にこの事件を検証した結果」としての視点が示す不穏さも巧妙だし、苦い結末の読後感は素晴らしいのである。何よりいいのは、自嘲的な皮肉の味わいだろうか。俺くらい図体がでかくなると、何をするにも理由がいるのさ。
読了日:9月17日 著者:ジョン ル・カレ
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)感想
だらだらと四十日くらいかけて読んでたような気がする上巻。対して、下巻は四日で読めた。そんなわけで、前作の事件の後始末から下巻の行動の布石へと繋ぐ上巻は地味で、退屈する箇所も多かった。しかしスマイリー率いる五人組は魅力的であるし、実質的主人公であるウェスタビーや敵役であるドレイクを象る人物模様の書き込みも贅沢な"溜め"になってるのである。
読了日:9月17日 著者:ジョン ル・カレ
屍者の帝国屍者の帝国感想
第二部まではDEよろしく外挿法礼賛。屍者技術(あえて屍術、ネクロマンシーと呼ばないところに"技術"への確固たる態度が見える)を得た十九世紀世界のアイディアを様々に見せてくれる。しかし第三部は主軸に追跡されてきた大ネタを明かす思索パート。会話形式ながらも論理展開を追うのが正直大変で、伊藤が長編二作で見せてきたビジョンを正確に投影しながらも明確にはその先の答えを示さずに終わるので消化不良感も。しかしエピローグでは、答えに留まらず、物語そのものの成り立ちと役割をそれを生起させる人間らの関係として示してくれた。
読了日:9月11日 著者:伊藤 計劃,円城 塔
フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))感想
屍者の帝国の予習がてら。後の様々な作品に受け継がれる要素の数々が見えるのも楽しいのだが、ヴィクター・怪物・ウォルトンそれぞれの話者が抱える孤独を吐露し悔恨と希望を繰り返す独白も細やかで面白かった。意外なほどに(特に怪物…こんなんだったのか)繊細で、あれこれと修辞を効かせて苦悩する彼らの独白は、正直に言ってかなり身勝手で閉じていたりするのだが、そうした構造こそが、これを悲劇的な神話の似姿たらしめているとも思う。
読了日:8月26日 著者:メアリ・シェリー
E.G.コンバット〈3rd〉 (電撃文庫)E.G.コンバット〈3rd〉 (電撃文庫)感想
カデナの章。いよいよ地球へ降り立つ。それまでにもいろいろと詰める事柄は多く、それからにも謎は色濃く立ち込めるる。メカ、サイバーはもちろん、キャラの描写も(主にルノアの逡巡とカデナの決意によって)実に読み応えのあるものになっていた。最終巻は2001年6月10日に出るそうだ。楽しみ、だな!EGFマダー?
読了日:8月23日 著者:秋山 瑞人
E.G.コンバット (2nd) (電撃文庫 (0307))E.G.コンバット (2nd) (電撃文庫 (0307))感想
今度は「バカでかい穴の中を落ちてるだけ」でここまで濃く、熱くできるというもの。試験対策編では教官と部隊の関係が切っても切れないとこまで来てることのみならず、上層部の思惑の絡み合いまで見せてくれており、並の作品ならばあの「珍回答」を延々とネタにしそうなところを、巧妙に構成している。落下の章の尋問パートも好きだ。現場と司令との対立ってのはこうした題材だと外せないところだが、これまた良い。一番気に入ったのは、ルノアが一枚の写真を置き去りにするところの心理だろうか。
読了日:8月23日 著者:秋山 瑞人
E.G.コンバット (電撃文庫 あ 8-1)E.G.コンバット (電撃文庫 あ 8-1)感想
「マニュアル操作で巨大ロボを動かすただそれだけ」で劣等生を成長させる教官の凄さは、そのまま「ただそれだけ」でこうも面白くする作者の手腕の凄さ、でもある。美少女だらけの軍隊もの、ではあるけれどもやけに荒々しく、(やや無理してる感のある)萌え要素よりも、メカやサイバーの描写の軽妙さに惚れる。英雄の苦悩、劣等生の意地といった部分でも縦横に切り込んでくる。文体的には、他の作品以上に黒丸文体の影響が色濃く見える。また、擬音語の多用や文字サイズの変更など、ラノベらしいあれこれも見えて、それらの融合を成す途上か。
読了日:8月23日 著者:秋山 瑞人
天地明察(下) (角川文庫)天地明察(下) (角川文庫)感想
挫折と出会いと別れ。切なくも力強く、「天地明察」へと迫っていく主人公。高校の日本史ではさらりと記述されているだけの彼の業績が、いかにさまざまな人々の想いに後押しされて、いかに大きなものを築きだしたのであるか。関孝和との対話からも明らかなように、ときには権威をも「人の縁」として利用しなければ天と地を明察するには至れない、そうして背負っていかねばならない、という重くそびえる構造が、しかし爽やかに書かれている。細かい数学的事項はわりと絞り、そういった人間と学問と世界のあり方に注力してくれてると思う。
読了日:7月14日 著者:冲方 丁
天地明察(上) (角川文庫)天地明察(上) (角川文庫)感想
なんせ題材が心憎い。泰平の世であることを人々の心のなかに落ち着かせるための基礎として改暦を位置づけ、己が何者であるかをいまだ知らずに彷徨う妙な立場の主人公の成長を活写し、今にも通じる「学問」の意味を教えてくれる。そういった構図の丁寧さはマルドゥックなどとも共通したものがある。
読了日:7月14日 著者:冲方 丁
中東戦争全史 (学研M文庫)中東戦争全史 (学研M文庫)感想
タイトル的には戦史中心の本に見えるし、当然ながらそういう部分も詳しいのだが、イスラエルという特殊な国家の成立から21世紀までの流れをわかりやすくかつ中立的に解説してくれている、守備範囲の広い一冊。個人的には、中東戦争が第四次まで終わった後の、イスラエル国内の与野党の争いによる和平交渉の停滞に関する記述が、この問題の複雑さのごく一端を、そしてごく一端であるゆえに簡単には片付かないさまを表しているようで、興味深かった。
読了日:7月8日 著者:山崎 雅弘
ジェノサイドジェノサイド感想
日本人大学生とアメリカ人傭兵を軸として絡み合うプロットには緊張感があり、SFとしても超人類の知性を「葉を落とす」だけで表現するくだりなどは鮮やかだと思う。しかし、かなりの頻度で「文系は理系より儲かる」とか「戦争の目的は石油」とか単純化されすぎた話を大の大人が語りだす。「あくまでエンタメだから」という例の文言で納得できればいいのだろうが、(単純に娯楽を指向して書かれたのではないだろう)歴史や思想的な部分にも同様の態度で踏み入っているため、そうも片づけられないという次第。
読了日:7月3日 著者:高野 和明
ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)感想
そこそここの辺の時代背景の知識はあるつもりだったがそれでも平気で時間を前後して真相を探るこの作品には普通に手こずってしまった。無論そんな構成と語り口こそが、「スパイの時代」の陰りを緻密に、そして哀愁深く映し出していっている。主人公の造形からしていわゆる「かっこいいスパイ」では全然ないわけだが、やはりかっこよさってのは人物らの深謀遠慮であるとか、ジャーゴン(現実にも使われるようになった「ハニートラップ」などの造語)であるとかに宿るのだ。しっかし『寒い国』に引き続き、またラストシーンにはやられちまったぜ。
読了日:6月17日 著者:ジョン ル・カレ
猛き箱舟(下) (集英社文庫)猛き箱舟(下) (集英社文庫)感想
とにかくいっぱい死ぬ。追うものと追われるものの、搾取するものされるものの争いは、視点の切り替わりを以て、生けるものと死せるものとの関係へと純化されていく。痛快と言い切るにはあまりに痛々しく、そしてその痛みすら常人の理解できるものではなくなっていく、要するに「あっち側」へ行った主人公の凄まじさ。ストレートながらも密度の薄さを感じさせない文体で、最後まで引っ張ってくれた。
読了日:6月17日 著者:船戸 与一
猛き箱舟(上) (集英社文庫)猛き箱舟(上) (集英社文庫)感想
ブラックラグーンから来ました。「ハードボイルド系クズ」という謎のワードが頭をちらつくけど(笑)、面白い。プロローグで引き込まれ、少数の利益が多数を害する世界をまたにかけるその後の展開にもするすると。
読了日:6月17日 著者:船戸 与一
すばらしい新世界 (講談社文庫 は 20-1)すばらしい新世界 (講談社文庫 は 20-1)感想
裏側である恐怖統制の様子をありありと描いていた1984とは対照的に、こちらはある意味表側しか存在しない世界、とでも言うべきか。徹底した階級化による途方もない平坦化、という字面の矛盾。完成しきった社会とその構成員が享受するあまりの「自明さ」によって反逆者が沈んで行ってしまうさまは、現代においても古さを感じない。好きなとこベスト3は第三章の短い場面と教条とがかわるがわる書かれているところ、第一七章の野蛮人と総統との幸福と真理の二択を巡るやりとり、そして最後の一文。
読了日:4月26日 著者:ハックスリー
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)感想
「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している。その話を誰かから聞いたという記憶はない。もともと知っていたような気がする。そんな話だ」…一文目から惹きつけてくれる、レニングラード包囲戦を舞台にしたデコボココンビの珍道中。きっと何かが少し違ったらこうはならなかった…そんな感覚が、明るくも暗くも瞬く。残酷と皮肉に塗れながらも、底のない絶望にも安易な楽観にも陥らない、そんな灰色の上を歩いていく感じが好き。ところで今日の夕飯は賞味期限の切れかけの卵を必要以上に使ったオムライスだった。
読了日:4月22日 著者:デイヴィッド ベニオフ
フルメタル・パニック! アナザー3 (富士見ファンタジア文庫)フルメタル・パニック! アナザー3 (富士見ファンタジア文庫)感想
短編集(というかサービス方面ではふもっふと言った方が正確か)っぽい巻。王子様のキャラが楽しい。リーナが達也にもにょってる心理について「いきなり入ってきて実力をあげたことへの嫉妬」方面から切り込んでるけど、「暴力の世界に巻き込みたくない」的な方面から切り込むのはもうちょっと先、シリアスな展開になってからか。ともあれもうちょっとでいいから重くして欲しい。
読了日:4月22日 著者:大黒 尚人
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)感想
やや羊頭狗肉の感あり。というのも、タイトルは問題提起の火口である「たまたま西洋人が持つに至った強力な力」を象徴しているに過ぎず、上巻で立てた「食糧生産がいかに人類史に影響を齎したか」に関するいくつかの仮説にひたすら世界中の実例をあてはめていく構成だからだ。そのため後半はかなり冗長に感じるし、下手をすれば「エピローグさえ読めばおk」と感じる(EPに出てくる中国に関する話、これがまた面白いのだ)。通貨の発明について触れてないのは意図がわからなくもないが、日本語における漢字文化の受容に対する見解には得心せず。
読了日:4月6日 著者:ジャレド・ダイアモンド
鷲は舞い降りた (ハヤカワ文庫NV)鷲は舞い降りた (ハヤカワ文庫NV)感想
実際にコトを起こしこれまで積み上げてきた準備の綿密さと綻びが一気にはじけて行く後半の200頁ほどは一気に。(歴史から考えて最初から見えている)失敗へと転がる様子がキモであるこのタイプの冒険小説らしく、その描写と構図は、全体に見える虚しさをも写し取ってもいる。人物は今ではテンプレ的になってしまってる部分も多いが、やはりプロであるシュタイナらは格好良いし、デヴリンの皮肉癖も小気味良い(行動は色々と軽率ではあるが)。コマンドーの起源はボーア戦争、という点でグレイの人物配置も興味深い。ところで続編って何するの。
読了日:3月30日 著者:ジャック ヒギンズ
The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)感想
相変わらず一冊に纏めるには無理があるんじゃないか(何せ9つのうち4つが未完成だ)とも思うけれど、この白と黒の間の装丁に象徴されているような他作品の萌芽、またはそれらに属さないものたちの輝きを見るのは楽しい。自分は割とATDの行く先が気になったのだ。内省的な主人公による一人称視点が基本の伊藤作品には珍しい虚無そのもの…装置性の極まった存在である彼をどう描くのか(技術者はジョン・ポールに通じるが)。フォックスの葬送とOHMSPがあるんだからS3を、というか同人纏めを、と望むのは行きすぎか。円城屍者帝国に期待。
読了日:3月17日 著者:伊藤 計劃
とらドラ〈3!〉 (電撃文庫)とらドラ〈3!〉 (電撃文庫)感想
おっぱい。わりとニヤニヤできるけれど、大河のヘソ曲がりと亜美の容姿強調のエンドレスアレにはやや食傷気味で、櫛枝嬢の(シリーズ後半のシリアスに繋がる)内面を読み取る作業もちょいと情報不足である。北村君も。水泳対決の何でもあり感は好きです。
読了日:3月17日 著者:竹宮 ゆゆこ
とらドラ〈2!〉 (電撃文庫)とらドラ〈2!〉 (電撃文庫)感想
亜美に関して、繰り返される容姿の描写を覆い返すほどには性格の悪さ(というよりリアルっぽさ、なのか)が強く真に迫っているとは思えなかったりする。というのも、他のキャラと併せてフィクションライン考えた上で受け入れる作業が、自分には結構難しいのだ。その不揃いさは独特の味があるのだが。アニメ版では後半の実乃莉のシリアスパートがしっくりこなかったのだが、そこも流れで注目して行こうかと思う。
読了日:3月17日 著者:竹宮 ゆゆこ
とらドラ!1 (電撃文庫)とらドラ!1 (電撃文庫)感想
アニメを見てから随分たっているけど、何となく手を出してみようかと。大河の暴力女ぶりに関して、けっこう印象が異なる。そういえばアニメ版で思考回路がよくわからなかったのはヒロイン連中より何より北村君だったな、と思いだし、そこらに注目して追ってみようかな、とも。
読了日:3月17日 著者:竹宮 ゆゆこ
龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)感想
2巻のための再読。読了後になってしまったが。三年もたてば色々忘れちまってるもので、細部のみならず、一指力剛や六牙の鈴の寓話の詳細すらアレしていたり。しかし龍の舞いの凄まじさや、主人公が孤独を知る場面の冴えなど、やっぱり素晴らしい。
読了日:3月17日 著者:秋山 瑞人
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)感想
とりあえず上巻は農耕牧畜の成立事情がメイン、導入として挟まれるピサロのインカ侵略の例を除いてはタイトルから想像されるような血生臭い話はあまりなし。農業が余剰作物を生み、それが文化や技術、そして経済や身分の格差を…というのは小学校で習う話だが、そこのところをもっと詳しく、噛んで含めるように、明快な仮説を交えて説明。しばしばレイシズムに陥る人種の能力差に目を付けた論ではなく環境の差に目をつけた論。要は「初期配置の重要さは異常」って話。栽培に適した動植物の選抜の話が面白い。バイオレンスを増すだろう下巻にも期待。
読了日:2月19日 著者:ジャレド・ダイアモンド
ブロークバック・マウンテン (集英社文庫(海外))ブロークバック・マウンテン (集英社文庫(海外))感想
山があり、落ち込むけど、意味もあり。字も大きく頁も少ない、短編ボリューム。映画と最も違うとこは割と獣のようにヤリまくってる(描写は薄いが)とこ…ではなく、ラストになってジャックの原体験が明かされ、また、ブロークバックマウンテンでの最後の日のことが象徴的に回想されるとこか。特に前者は、映画でも明かされたイニスの原体験(父からゲイの虐殺死体を見せられる)と対になり、また時代独特の虐待的宗教文化の問題も孕んでいるので、同性愛よりは友情・思い出側に軸足が置かれた映画版との違いとしても大きい。解説が的確で詳細。
読了日:2月10日 著者:E・アニー・プルー
殺す (創元SF文庫)殺す (創元SF文庫)感想
今まで読んだバラード作品と比べると、微に穿って終末の比喩を盛り込むような執拗な光景描写を避けた筆致であり、報告書的な体裁をある程度保っている(なので読みやすい)。しかしその視線の動きの精緻さはそのままであり(特に殺戮の場面)、ミステリーとしての体裁をちらつかせながらやはり綺麗に解決させるわけではなく、むしろ「警告」の書としては無駄がない。優しさの飽和が招く終末、という主題は「ハーモニー」などにも受け継がれたところか。あとこの邦題は先進国の“理由なき”少年犯罪の象徴としては意外とストレートにピッタリなのかも
読了日:2月8日 著者:J・G・バラード
言壺 (ハヤカワ文庫JA)言壺 (ハヤカワ文庫JA)感想
初神林長平だったりする。「栽培文」のヴィジョンの美しさや、「戯文」の空恐ろしさが特に好み。ワーカムという記述支援機械によって「己の言葉」の境界線があいまいになっていく様はまさに今の我々が晒されている事態そのもの。何より全体を通して、人間の世界(これを「現実」とか「虚構」とかきっぱり言い換えちゃいかんのだろう)を構成する最小単位としての言葉とは何かに対する考察に飲み込まれる。
読了日:2月8日 著者:神林長平
パニッシュメント (ガガガ文庫)パニッシュメント (ガガガ文庫)感想
デウスエクス何とかを皮肉的にさらりと使ってしまう作品はいい。傍から見たらどうしようもないとしか言い様のないけれどしかしある意味では安定した位置に据わってしまうという終わり方は小気味がいい。拠り所としての宗教に対する考え方は善意というもっと大きいところにも適用され、他作品と比べれば根っからの破綻者には見えない主人公がしかしやはり最初から「違って」いたのだとわかる終盤へ向け冴えを増す。
読了日:2月2日 著者:江波 光則
ストレンジボイス (ガガガ文庫)ストレンジボイス (ガガガ文庫)感想
加虐者、被虐者、そして傍観者という役割において、対人関係としての行為でなく行為そのものへの強迫観念のためにそれぞれ極みに立ったような三人が回し車の中のそれぞれの位置にどうしようもない形で治まるまで。もう少しで、というバッティングセンターの場面に覚える寂寥感とかたまらない。
読了日:2月2日 著者:江波 光則
ペイルライダー (ガガガ文庫)ペイルライダー (ガガガ文庫)感想
この主人公のやり方生き方はかつて自分がやりたかったことであるし、考え方については現在進行形ですらあるが、そのような考え方を持ってしまう時点で自分には到達できないのだ。イーストウッド西部劇の「外からやってきて引っ掻き回して一応解決して去っていく」という図をこの形式で、主人公の行動原理を否応なく見せ付ける形で使ってしまうあたりにも感心
読了日:2月2日 著者:江波 光則
龍盤七朝 DRAGONBUSTER 〈02〉 (電撃文庫)龍盤七朝 DRAGONBUSTER 〈02〉 (電撃文庫)感想
「勁」が物理学でいうところの「運動量」である、という前提を弓の弦のようにして決して切ることはなく張り詰めさせ、矢継ぎ早に飛ぶ剣劇描写。兵隊やくざに大男に快楽殺人者に、とテンプレを崩さず、しかし相変わらずの匂い立つ文体で読ませる手腕。龍虎相討の構図を逆転させるのか、次で卯王朝御前試合は締まるのか、というのは未だ揺れて気になるところ。
読了日:2月2日 著者:秋山 瑞人

2012年に読んだ本まとめ
読書メーター



○おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
今年から新しい生活が始まり、新しい友達も出来てはいるんですが、冒頭で書いたように、本の話題を交わすことはあまりないもので、一応文芸系サークルに入っていた者としては、ちょっと寂しいこの頃です。
しかし、何かの間違いで入ってしまった体育会系サークルは抜けてしまったし(なんだかんだで金取られちゃったが)、時間は十分にあるので、うまいこと生かしていきたいものですね。
それではまた。


http://book.akahoshitakuya.com/u/35041/matome_y
※1
まぁ、時間はこれだけかけてこそだと思う。4か月ペースで出してるフルメタアナザーとか、特にそう思うんだよな……。本編から乖離してはいないししっかりやってるけど、本編のようにSFや冒険小説の要素を取り込んで一冊にきっちり纏めてる、とは言い難いからな……。

テーマ : 日記
ジャンル : 日記

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

-

管理人の承認後に表示されます

コメントの投稿

非公開コメント

アクセスカウンター
twitter
プロフィール

Solidrb

Author:Solidrb
自他ともに認めるMGS(メタルギアソリッド)フリークス。
その証拠に、当初はもっと幅広く話題を扱おうかと考えていた(←大嘘)このサイトも、ずるずるとMGSネタオンリーブログになりかけてきている。

SFを中心に、様々な作品に触れようと目論んでいる。
が、生来のヘタレゆえ、なかなか数がこなせない。

twitterや読書メーターもやっているので、そちらにも是非いらしてください。

○注意書き
・コメント、拍手
常に餓えておりますので、古い記事にもぜひ気軽にどうぞ。名前欄はテキトーでもおkです。
(今後どうなるかはわかりませんが)全レス主義で臨みます。
コメントは承認制を採っていますが、スパム以外は基本的に消さない方針です。

・トラックバック
コメント同様、承認制ではありますがお気軽にどうぞ。
ただし、記事内容と関連性の無い宣伝トラックバック(※どう見てもツールでキーワード検索かけて貼っただけの、商業的性格が強いものなど)については削除することにしました。

・リンク
ご自由にどうぞ。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
読書メーター
TCrbの最近読んだ本
応援中
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。